研究課題/領域番号 |
23405009
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
曽田 貞滋 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00192625)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 貝食性オサムシ / 陸貝相 / 適応的形態 / 捕食者 / 共進化 |
研究概要 |
本年度は以下の3つの海外調査を実施した. (1)中国内陸部における貝食性オサムシの多様性と陸貝相:2012年6月16日~30日に,中国山西省,陝西省,寧夏回族自治区,甘粛省において調査を行った.調査は中国科学院・Hongbin Liang博士のグループと共同で行い,日本からは研究代表者曽田と,東北大学千葉聡(連携研究者)・森井悠太(研究協力者)が参加した.山西省,陝西省内では,貝食性のオサムシとしては大型のカブリモドキ類が得られたのみであったが,寧夏,甘粛においては,数種の貝食性オサムシが得られた.とくに甘粛省文県においては,巨頭型・狹頭型の貝食性オサムシの生息地を精査し,そこに生息する陸貝の多様性を確認した.陸貝では,オナジマイマイ科の種の形態が非常に多様化していることが分かり,捕食者の影響が示唆された. (2)韓国におけるクビナガオサムシ亜属の調査:2012年8月21日~25日,韓国智異山におけるクビナガオサムシ類の調査を,神戸大高見泰興(連携研究者)が,韓国の共同研究者,金重洛博士と行った.しかし悪天候のため,目的の種を採集することができなかった. (3)モロッコにおけるクチボソオサムシの分布と陸貝相:2012年12月1日~7日に,モロッコで貝食性のクチボソオサムシCathoplius asperatusとその餌となる陸貝の調査を行った.調査には研究代表者曽田,神戸大学高見(連携研究者),東北大学森井悠太(研究協力者)が参加した.カサブランカから,アガディールまでの大西洋岸の数カ所で,野外観察を行った.この地域の唯一の貝食性オサムシであるクチボソオサムシは,陸貝の豊富な場所の石下などに見出された.クチボソオサムシは頭部の狹頭化が顕著で,比較的小型の貝に頭を突っ込んで捕食することが確認された. 以上の野外調査で得られた試料について,形態解析,分子系統解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では,比較的アクセスの難しい地域の陸貝が豊富で,多様な貝食性オサムシが生息する石灰岩地帯や乾燥地帯における調査を主としている.そのため,調査旅行の実施が現地の状況や気象条件によって困難な場合もあり,昨年度は十分な調査が行えず,計画に遅れが生じていた.今年度は,中国甘粛省,モロッコという本計画の主要な調査地へ赴くことができ,昨年度の遅れをやや挽回できた.調査で得られた試料の解析がまだ完了してはいないが,オサムシと陸貝双方のの系統的・形態的多様性に関して,とくに中国内陸部での新しい知見が得られており,おおむね順調に進展していると自己評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度となるが,中国東北部およびアルメニアでの野外調査を行い,異なる貝食性オサムシと陸貝相の関係を明らかにしたい.また,オサムシと陸貝の形態解析・分子系統解析を進め,両者における形態多様化と系統進化の関係を明らかにし,形態多様化に捕食者と被食者の相互作用が関与しているかを検討したい.また分析結果に関しては,速やかに論文化して公表することに努める.さらに海外調査に現地で協力した共同研究者との交流,共同研究を推進するために,共同研究者の日本への招聘も行う.
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