本研究では,餌の陸貝の種・形態構成と貝食性オサムシ亜族の種・形態の間の生態的・進化的対応関係を解明することを目的としている.本年度は,貝食性オサムシ亜族と陸貝の分布・生態・進化に関する以下の調査研究を実施した.海外調査に関しては,2013年6月に,研究代表者曽田,連携研究者千葉,研究協力者森井悠太(東北大学)が,中国科学院動物学研究所の共同研究者とともに,中国遼寧省の本渓市および丹東市においてオサムシ(カブリモドキ亜属・クビナガオサムシ亜属)と陸貝の採集調査を行った.また2013年9月には,アルメニア共和国内において,研究代表者曽田,研究協力者加藤真(京都大学)が,アルメニア科学アカデミーのGayane Karagyan博士とともに,オサムシと陸貝の採集調査を行った.とくにオサムシ亜族の中でも最大級のサイズを持つ貝食性オサムシProcerus scabrosusと,その餌となる大型陸貝Helixの生息地を調査した.また,2014年2月に研究代表者曽田は北京市の中国科学院動物学研究所の共同研究者・Hongbin Liang博士を訪問し,本研究に関する打合せを行い,Liang博士らが採集した貝食性オサムシ亜属サンプルの検討を行った.これまでの調査で得られたサンプルを用いて,以下の分析を行った.捕食者に対応して殻形態が多様化したと考えられる中国産オナジマイマイ科の陸貝について,分子系統解析を行い,捕食者に対する防御形態と考えられる急速な殻形態の多様化が起こっていることを明らかにした.また,中国産の貝食性オサムシ亜族について分子系統解析を行い,巨頭型と狹頭型の形態分化が複数の亜属内で繰り返し起こってきたことを検証した.2014年3月にアルメニア共和国から共同研究者のKaragyan博士を京都大学に招聘し,貝食性オサムシの染色体に関する共同研究を行った.
|