研究課題/領域番号 |
23405011
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
辻 瑞樹 琉球大学, 農学部, 教授 (20222135)
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研究分担者 |
松浦 健二 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40379821)
立田 晴記 琉球大学, 農学部, 准教授 (50370268)
菊地 友則 千葉大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80608547)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生態 / 環境 / 昆虫 / 国際研究者交流 / 外来種 |
研究概要 |
前年に引き続きオオハリアリのアメリカ合衆国侵入個体群と日本の在来個体群で以下の比較を行った. (1)遺伝マーカーによる個体群構造,(2)巣仲間認識ラベルとされる体表炭化水素プロファイル,(3)社会構造(巣当たり女王数,体サイズ分布,種内敵対行動),(4)寄生性微生物の蔓延度,(5)安定同位体比.2年目である本年度は昨年度決定したサンプリング法を用い網羅的データ収集をさらに進めた.前年度試行錯誤の末決めたサンプリング法は以下の通りである(1)0.9kmのトランゼクトを設け100m ごとに半径10m以内の朽ち木内に営巣していたアリを採取する(各トランゼクト内に10個小サイトが存在).朽ち木内に棲む他種アリやシロアリも記録する.また周辺の落葉と朽ち木もサンプリングする(現在までにこのトランゼクトは日米で各5カ所程度設置).(2)巣毎のアリのサンプルを基本調査単位とし,DNA ,体表炭化水素などを比較する.(3)実験室に持ち帰った直後,巣間相互導入により種内の敵対的なユニット(巣群)の存在を,個体を1対1で対峙させるアリーナテストで確認する.女王アリは解剖し繁殖活性に関する情報を収集する. 上記サンプリングで,現存量に大きな違いはあるものの,北米でも日本でも基本的な社会構造は同じで,多女王多巣性のコロニーが数から数十メートルの範囲広がっているが,それを超えると基本的に混じらない排他的な異コロニーが存在することが示された.DNAデータはさらに興味深く各コロニーは1個体の創設女王由来の子孫で構成されることが示された.一方,安定同位体分析と病原菌に対する感受性では日米個体群に顕著な違いが示唆された.体表物質のデータはまだ収集中であるが,これらは遺伝的ボトルネック説よりも,天敵や競争等の生態学的な開放の重要性を強く示唆する結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は,日本から外国に侵入した外来種であるオオハリアリを日米個体群間で徹底比較する事で,侵略性の機構に関する仮説である,(1)ボトルネック説,(2)栄養段階説,(3)r淘汰説,(4)前適応説,(5)生態的解放説の全てを検証することを目的としたが,そのうちの主要仮説である(1)が既に否定され,(5)を支持する実証データがこの時点で得られているのは予想外の成果である.後2年で,これらデータ収集と分析をさらに詰めておこないたい.
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今後の研究の推進方策 |
(1)体表物質の分析を進め.ボトルネック説と正の頻度依存淘汰説の予測を検証する. (2)生態的な解放が起った具体的な要因としての,オオハリアリの捕食行動に対する,日本の他種アリと北米の他種アリの感受性や抵抗性について,深く調べる. (3)2の目的のため,オオハリアリ非分布域である北海道などのアリも用いる. (4)前年に続き,環境に存在する病原微生物に対する耐性を日米個体群間で比較する. (5)オオハリアリ以外の種も比較対象にする.たとえばオオハリアリの近縁種で北米未侵入のナカスジオオハリアリや,北米で分布を広げているアメイロアリがその候補である.
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