研究課題/領域番号 |
23405012
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
片倉 晴雄 北海道大学, 大学院・理学研究院, 特任教授 (40113542)
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研究分担者 |
藤山 直之 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (90360958)
加藤 徹 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (80374198)
小路 晋作 金沢大学, 地域連携推進センター, 助教 (10447683)
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キーワード | ニジュウヤホシテントウ / 食草拡大 / 東南アジア / インドネシア / マレーシア / ムラサキチョウマメモドキ / 地理変異 / 小進化 |
研究概要 |
本研究計画は、アジア熱帯域のニジュウヤホシテントウを材料としてナス科食からマメ科ムラサキチョウマメモドキ(以下、チョウマメと略)への食草の変換・拡大が時間的・空間的にどのような過程を経ながら進行してゆくかを解明する事を目的とする。計画初年度である今年度は2011年6月から2012年2月にかけて、のべ6名がのべ7ヶ月強の期間インドネシア各地およびマレーシア(クアラルンプール)に赴き、現地の共同研究者と以下の研究を実施した。(1)バリ島、スラウェシ島北部、スマトラ島中部・北部、ジャワ島東部、クアラルンプールにおいて2種食草の加害状況を調査し、これらの地域およびボルネオ島東部の集団について成虫の食草選好性を調べた。(2)バリ島、パダン(スマトラ中部)、ボゴール(ジャワ西部)の集団について、幼虫の飼育を行った。その結果、チョウマメ利用には地域間で差があり、選択実験によるチョウマメ選好性はおおむねその地域差と一致すること、自然状態におけるチョウマメの利用は、標高によって減少するチョウマメの現存量および都市化の進行による食草環境の変化の影響を受けているらしいことが明らかになった。上記の調査で得られたサンプルは集団解析および寄主変換の回数の推定を行うためにすべて実験室に持ち帰り、現在DNA解析を実施中である。また、ニジュウヤホシテントウと同時に採集されたナス食いのマダラテントウ3種を用いて食草選択実験を行ったところ、そのうち2種に自然条件下では全く利用していないチョウマメを少量ながら摂食する個体が含まれていた。なお、当初計画していた「選抜実験による食性の進化速度と遺伝的背景の推定」は、東日本大震災発生に起因する配当研究費削減の可能性があった為に本年度の実施を見送った。成果の一部は日本生態学会大会においてポスター発表し、さらに、年度末に成果発表と次年度計画立案のためのミーティングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、概要に記したように選抜実験以外はほぼ計画通りに実施することが出来た。海外共同研究者との協力も順調である。さらに、計画立案段階には重視していなかった標高や都市化による寄主植物利用の違いの存在や、ニジュウヤホシテントウ以外の種にも潜在的なマメ食い能力が認められたこと等、次年度以降の計画立案に影響を与える重要な発見も相次いだ。
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今後の研究の推進方策 |
計画2年度、3年度も当初の計画(多地点での簡易食草選好テストと重点地域における時系列に沿った詳細な食性の調査の併用)を大きく変更する必要は無いと考えている。さらに、今年度明らかになった標高および都市化の影響を定量的に表現するための調査を重点地域において実施したい。また、マメを利用する能力がニジュウヤホシテントウ以外にも保持されている可能性が高まったため、未調査のナス食マダラテントウについて調査を進めるとともに、マメ食の能力があることが判った種について、マメ飼育における幼虫の成育の可否を検討する。初年度の実施を見送った選抜実験については、残り2年間では顕著な成果を得られない可能性があるので、計画を変更し、3ないし4世代にわたる交配実験によって食草利用能力の遺伝的背景を推定する事としたい。
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