研究概要 |
これまでにフォルニカータ生物や他の嫌気性真核微生物が検出されていない国内外の嫌気水圏環境を調査し、環境DNA解析や嫌気・微好気培養により新たなフォルニカータ生物および他の系統群に属す嫌気真核微生物を多数見出し、それらをもとに系統分類・進化学的な解析を行うことを目的として研究を進めた。 本年はパラオ海水湖の調査をH23年度に続いて行った。嫌気培養の結果得られた培養株の多くは既知の真核微生物であったが、1つの培養株(PAP020)については形態学的にもSSUrRNAによる分子系統解析でも真核生物系統樹の中に明確に位置付けることはできなかった。そのため、系統マーカーとして適切なα-,β-tubulin, Actin, HSP90, EF-2の5つの遺伝子の配列を決定し5遺伝子による連結分子系統解析を行ったが、位置づけを明確に示すことはできなかった。そこで現在、この培養株からRNAを抽出し、ライブラリーを作製して次世代シーケンサーによる網羅的なEST解析を行なうことにより、大規模分子系統解析(phylogenomics)のデータを得ることを目標に準備を進めている。 一方、H24年度に引き続き国内の嫌気水圏環境の調査も行い、形態学的情報とSSUrRNAの分子系統解析のみでは系統的位置を明らかにできない複数の分離株を得ることができた。 さらに、H23年度に分離した自由生活性EntamoebaのESTでデータのアノテーションの作業を進めた。
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