研究課題/領域番号 |
23405018
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山本 由徳 高知大学, 自然科学系, 教授 (00093956)
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研究分担者 |
宮崎 彰 高知大学, 自然科学系, 准教授 (00304668)
吉田 徹志 高知大学, その他部局等, 名誉教授 (10145112)
新田 洋司 茨城大学, 農学部, 教授 (60228252)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サトウヤシ / ’サグバル’ / 樹液生産量 / バイオマス / 全糖含有率 / デンプン含有率 / 国際研究者交流 / インドネシア |
研究実績の概要 |
2014年9月に、インドネシア、北スラウェシ州ミナハサ地区でサトウヤシについて、また同州サンギヘ島で‘サグバル’(Arenga microcarpa)について、樹齢の異なる個体を伐採調査し、生長形質、地上部各部位のバイオマス、無機および有機成分含有量を調査した。また、サトウヤシについては、樹液生産量と樹液糖度についての調査を行った。 サトウヤシの採液量は、20~40L/個体/日と多かったが、樹液糖濃度は、やや低い傾向が見られた。サトウヤシは、幹立ち後、第一♀花序出現期までは樹幹直径を除く各生長形質や地上部各部位のバイオマス量が増加し、個体当たり生重で2.5-3.5t、乾物重で1.0-1.2tを示した。しかし、それに続く♂花序出現期から採液期間のバイオマス量の変化は小さく、採液終了後は低下した。樹幹髄部のデンプン含有率は、♀花序出現期頃に約30-40%と最大値を示したが、この値はサゴヤシと比べて低く、個体当たりのデンプン収量は100-200kgであった。 ‘サグバル’では、幹立ち期から収穫適期(花序出現期)にかけて樹幹直径を除く生長形質やバイオマス量は増加した。このヤシは、収穫適期の樹幹長は約20mと長いが、樹幹直径は15-20cm程度と細く、地上部バイオマス量は生重で約550kg、乾物重で約275kgであった。また、髄部のデンプン含有率は、花芽形成期頃に最大となり、50-60%を示し、樹幹の部位によってはサゴヤシと同等以上の値を示した。収穫適期の個体当たりのデンプン収量は、約100kgであった。 両ヤシの髄部デンプン含有率の差異は、走査型電子顕微鏡観察においても認められた。 サトウヤシと‘サグバル’の地上部各部位のエタノール製造効率は、それぞれ47~81%、53~94%、エタノール生成量は5.7~43.1ml/100g、2.4~32.6ml/100gで、髄部が最も高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って,今年度は、昨年調査を行ったインドネシア、南スラウェシ州タナ・トラジャと並んでサトウヤシの利用が盛んな北スラウェシ州ミナハサ地区において、サトウヤシの樹液生産性と樹齢と樹液採集に伴うサトウヤシの生長形質、地上部各部位のバイオマス、全糖、デンプン含有率と含有量の変化を明らかにした。調査期間に,現地農家が採集した樹液量を測定するとともに,採取液の糖濃度を調査した。また,各部位の無機成分含有量の調査を継続している。これに加えて、サトウヤシと同じArenga属に属するデンプン蓄積ヤシである‘サグバル’(Arenga microcarpa)が特異的に利用されている北スラウェシ州サンギヘ島において、サトウヤシと同様に幹立ち直後から収穫適期(花序出現期)までの地上部の生長形質、各部位のバイオマス、無機、及び有機成分の分析を行った。サトウヤシ、‘サグバル’の小葉並びに髄部の走査型電子顕微鏡観察を行い、内部形態面からの両種間やサゴヤシとの差異について検討した。さらに、サトウヤシおよび‘サグバル’の地上部各部位からのエタノール生産効率について検討した。ジャワ島チアンジュールでは,サトウヤシの樹液生産量について長期のデータが蓄積されている. 当初の計画に沿って現地調査が行われており、また、採集材料の観察、分析などもほぼ予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、既に申請者らがデンプン蓄積ヤシとして高い潜在性を有することを報告しているコリファヤシ(Corypha utan)を調査対象とする。調査地として、既に予備的に調査を行っているインドネシア、東ヌサ・トゥンガラ州クパン市郊外および南東スラウェシ州ムナ島を選定する。これらの調査では、幹立ち直後から収穫適期(開花期)までの生長形質やバイオマス、無機成分(N, P, K, Ca, Mg)や有機成分 (全糖とデンプン) 含有量がどのように変化するかを明らかにするために、幹立ち直後から収穫適期(開花期)までの樹齢を異にする個体を約8~10本程度伐採調査する。各伐採樹の生長形質の調査と共に、各部位別のバイオマス量を明らかにし、さらに各部位のサブサンプルを採集して乾物率を求め、各部位の生重と乾物率より乾物重を算出する。また、地上部各部位の乾燥材料を用いて有機・無機成分の分析を行い、含有率と含有量を算出する。そして、各部位からのエタノール生産効率の測定,地上部各部位の内部形態の観察を行う.また,クパン市のあるチモール島の南部に位置するロテ島において、盛んに利用されているパルミラヤシ (Borassus flabellifer)の樹液生産量や糖濃度の測定を行い、既に調査を行ってきているサトウヤシの樹液生産との比較を行う。 上記のほかに,ジャワ島のサトウヤシの生産地であるチアンジュールにおいて実施中の樹液採集を継続し,その諸特性を測定する. 以上の結果より,コリファヤシのデンプン資源ヤシとしてのエタノール生産効率と生産量を評価する.また、パルミラヤシの樹液生産性とエタノール化資源としての評価を行う。
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