研究課題/領域番号 |
23405022
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 独立行政法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
南雲 不二男 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (20399372)
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研究分担者 |
後藤 慎吉 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (00354043)
内田 諭 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (60425535)
伊藤 一幸 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80355271)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フィリピン / ガリー侵食 / 除草剤 / 作付け体系 / 雑草 |
研究概要 |
パナイ島の3郡、5村、計50戸の農家を対象に、除草剤耐性品種の利用、評価、導入前後の作付け体系などについて、聞き取り調査を実施した結果は以下のように要約される。 1) 2014年調査の時点で、農家の97.7%が除草剤耐性品種を導入している。2001年から導入が始まり、導入のピークは2006年であった。本品種を70%が高く評価し、30%がある程度評価した。高評価の理由は収量が高い(82%)、管理が容易である(82%)、労働が節約できる(68%)、ことがあげられた(複数回答)。2)しかし、本品種の導入を機に、作付けを拡大したのは、30%にとどまった。その原因は拡大可能な農地がないことであった。一方、その作付けが拡大された土地のそれまでの土地利用形態は草地が56%を占め、その土地の傾斜は、急傾斜(10-30%)が56%、傾斜地(5-10%)が33%を占めており、山地の傾斜地に作付けが拡大したことがわかる。3)土壌侵食について、多くの農家が、リル、シート、およびガリー侵食を経験しており、ガリー侵食が自分の農地での発生を経験しているのは、54%に上った。この調査結果は昨年度実施したルソン島イザベラ州での調査結果と同様であった。 イザベラ州内の地域を対象とした、衛星データを用いたガリー侵食域の抽出手法の改良を行った。これは、谷筋等に存在する植生等による分光データのハイコントラスト域が誤判別されていたのに対し、多時期のデータより推定した森林残存域を除外することにより、誤判別の低減化を実現した。また、複数年時の衛星データを解析し、土地利用の履歴を推定したところ、対象地域では2000年頃より顕著に森林が減少して耕地化したことが示された。耕地化は、斜面上部から中部の比較的緩斜面から広がったが、近年では斜面下部にある比較的傾斜度の大きい部分へ展開したことが解析により示され、さらに、現地調査によってもこうした現象が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィリピン、ルソン島以外の島における調査を行うことができたとともに、さらには、FAOとの共同研究により、アジア諸国の除草剤耐性トウモロコシ品種利用の実態についてもアンケート調査により把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)これまでの調査結果を中心に、次年度5月にワークショップを共催により実施し、本課題の問題点について警鐘を鳴らすことを計画している。 2)カガヤン流域総合農業研究センター(CVIARC)(イザベラ州、カガヤン郡)に設置した傾斜圃場において、トウモロコシ残渣管理と除草剤散布頻度処理を組み合わせた土壌流出試験を引き続き実施する(最終年度)。 3)衛星データおよび標高データによるガリー侵食域抽出手法の開発と適用性の評価を行うとともに、イザベラ州サンロレンソ村とその周辺を含む地域のガリー侵食密度分布データを作成する。さらに、土地利用変化、特に森林からの耕地化の履歴とガリー発生との関係を分析し、フィリピン傾斜地上の耕地における土壌侵食問題の理解を深化させる。
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