研究課題
イネ科作物を宿主とする根寄生植物ストライガは、アフリカにおける農業生産を阻害する最大の生物的要因となっている。本研究では、宿主植物のストライガ低感受性を、抵抗性と耐性に識別して解析する。平成23年度は、日本ではライゾトロン法により、スーダンではポット栽培試験を行い、ストライガに対するソルガムとイネの感受性を評価した。ライゾトロン法により評価した結果、イネ52品種とソルガム13品種に対するストライガの寄生率は、それぞれ1~60%および20~50%であった。ライゾトロン法で最大のストライガ寄生率を示したイネ品種NERICA18は、ポット試験(ストライガ種子16mg/土壌9kg)でも5.8個体と最大のストライガ出芽個体数を示し、両評価法で高いストライガ感受性が確認された。一方、NERICA5は、ライゾトロン法での寄生率が2.7%、ポット試験での出芽個体数が0.5個体と、高い抵抗性を示した。興味深い知見として、寄生したストライガが高頻度で枯死するイネ品種を見出した。ソルガムについては、現地で感受性と認識されている品種Dabarと抵抗性と認識されている品種Haqiqaのストライガ応答をポット試験で比較した。その結果、1ポット当たりのストライガ出芽個体数は土壌に混入するストライガ種子密度が低い条件(8mg/9kg)では、Dabarで15.8、Haqiqaで0.5個体と両品種間に有意な差異が認められたが、高い条件(16mg/9kg)では有意な差異は認められなかった。このことは、ライゾトロン法で品種間でのストライガ寄生率の差異がイネに比べて小さいという結果とも矛盾しない。また、寄生関係にあるDabarとストライガの葉の内生ABA濃度は、土壌水分条件に関わらず、ストライガで約8倍も高いことを見出した。ストライガはソルガムに比べて土壌乾燥による気孔開度の低下が小さいという知見と併せて考えると、ストライガは葉内の内生ABA濃度が高くなる条件下でも気孔開度を高く保ち、これによりソルガムからの同化産物の転流を維持していると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
ライゾトロン法とポット試験の結果が大きくは矛盾しないことが確認でき、ストライガ感受性を評価する簡便な方法としてライゾトロン法が有効であることを見出した。ライゾトロン法およびポット試験の結果に基づき、高いストライガ抵抗性を示すイネおよびソルガム品種を見出し、今後の抵抗性解析に好適な材料を確定した。さらに、次年度以降に備えてソルガムからストライガへの転流を解析する実験の基盤を整えた。
ライゾトン法では発芽したストライガ種子を宿主根系に接種するため、いわゆるpost-attachmentの抵抗性の評価をしている。一方ポット試験では、各宿主作物品種の根からのストライガ種子発芽刺激物質の分泌量の違い(pre-attachmentの抵抗性)も、最終的なストライガ出芽個体数に影響を与える。このため、水耕栽培したソルガムおよびイネ品種の根滲出物のストライガ発芽刺激活性も調査し、より幅広い視点からストライガ抵抗性・耐性を解析する。また、今年度実施した、宿主同化産物の転流について^<13>Cトレーサーを投与したサンプルの分析を急ぎ、次年度の実験設定の参考とする。さらに、ストライガとソルガムの葉の気孔密度と開度の解析を行い、外生ABAに対する気孔応答の差異について検討する。
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Journal of Agricultural and Food Chemistry
巻: 59 ページ: 10485-90
10.1021/jf2024193
巻: 59 ページ: 9226-31
10.1021/jf202418a