研究実績の概要 |
本研究は、平成23年度から4年間を研究期間として実施している研究の最終年度である。ケニアの内陸部でJICAが1997年に造成したMelia volkensii(以下、メリア)とAcacia senegal(以下、アカシア)の密度試験区を用いて、現在の造林木の蒸散量や土壌水分量の日変化、季節変化を測定することで、樹木個体および地域の水収支を明らかにする。さらに、間伐試験や伐倒・掘り取り調査で、生長経過や密度効果についての解析を行う。それらの結果から、乾燥地における樹木の生長が地域の環境や林分動態に与える影響を明らかにすることを目的としている。 平成26年度は林分の内外の蒸発量を測定するために、メリア密度試験林の林床と林外で蒸発パンによる蒸発量の測定を行った。さらに樹木個体の蒸散量を推定するために、4個体について樹液流速度と日中の蒸散速度を測定した。それらのデータを元に、葉面積と樹冠投影面積から日蒸散量を推定し、水収支を求めた。 樹冠上、中、下の日蒸散量は7.74, 5.77, 1.42mm/dayとなり、上部は下部の約5.47倍の速度を示した。単位面積あたりの日蒸散量は個体間で2倍ほどの違いはあったが、平均すると19.1mm/dayとなった。 林内と林外の蒸発量は1.4mm/day、5.1mm/dayとなり、林冠被覆で蒸発量は70%ほど減少した。しかし、林冠被覆率が2%減少すると蒸発抑制効果は5%減少した。 この時期の日平均降雨量は3.4㎜で、裸地からは5.7㎜が蒸発し、メリア林からは20.5㎜が蒸発散で失われたことになる。葉量が最も多くなる時期の蒸発散量であるため、降雨量よりを大きく上回る結果となったが、乾期やその前後の落葉期の収支を求めて、年間を水収支と林分管理の関係を検討する必要があることが示唆された。
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