研究課題/領域番号 |
23405031
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西川 淳 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (10282732)
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研究分担者 |
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
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キーワード | 食用クラゲ / 東南アジア / クラゲ漁業 / 大量発生 / 生活史 |
研究概要 |
東南アジアにおけるクラゲ漁業の実態の解明および食用クラゲ類の生物・生態学的知見を得ることを目的とし、2力国で調査を実施した。マレーシアでは、プトラ・マレーシア大学と合同でクラゲ漁業の実態調査、食用クラゲの個体群動態、クラゲ漁場の水質環境データ、食用クラゲの共生生物、安定同位体を用いた食用クラゲ類食段階推定に関する調査を行った。また、クラゲ漁場周辺で食用種以外のヒドロクラゲ類、クシクラゲ類の調査を行い、未記載新種と思われる種1種を含む14種を見いだした。タイでは、大規模洪水の影響で当初予定していた調査地をアンダマン海およびタイ湾南西部に変更し、ブラパ大学との合同調査を実施した。同所的に産する2種の食用クラゲ、ヒゼンクラゲとLobonemoidesにはカイアシ類、クモヒトデ類、クラゲモエビ、クロホシヒラアジ稚魚が共生していたが、クロホシヒラアジ稚魚の大型個体は前者、小型個体は後者に棲み分けていることが明らかになった。また、窒素安定同位体の解析の結果、後三者の共生生物はクラゲそのものを食していないことが示唆された。クラゲ類共生生物に関しては、瀬戸内海でも同じ手法で調査を行った。アンダマン海では、Lobonemoidesの健康な個体が採集できたため、プラヌラ幼生を採取するための人工授精を試みた。 マレーシアの研究者を日本側の研究室(東京大学、海洋研究開発機構、北里大学)に迎え入れ、安定同位体を用いた食用クラゲ類の食段階推定、クラゲ類の分類や室内飼育に関する共同研究・教育を実施した。また、次年度以降の研究計画について議論した。 以上のように、本年度は研究初年度にあたるが、従来ほとんど知られていなかった東南アジア2力国でのクラゲ漁業に関わる水産学的知見や食用クラゲ類他の生活史の一部を明らかにできた。さらに、海外共同研究者の研究教育にも貢献できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、東日本大震災など社会的な混乱による補助金支給の分割払いや調査国であるタイ国での洪水被害などもあり初動はやや遅れた感があるが、最終的にはタイ国、マレーシア国などで共同研究者と共に精力的な研究活動ができた。実施初年度にあたる本年は、研究データの蓄積と信頼関係の構築を中心に考えたが、一部研究論文の公表や学会発表も行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、まず本年度に東日本大震災などの社会的混乱の影響により実施できなかったベトナム国での調査を実施したい。また、ある程度の成果を挙げられたタイ国、マレーシア国では研究成果の公表を積極的に行っていきたい。現在のところ研究を遂行する上での決定的な問題点は生じていないが、昨年度はタイ国で大規模な洪水が発生するなど調査地での天変地異状況ならびに政治・社会情勢には十分に注意を払い、海外共同研究者と綿密な連絡をとりつつ、安全かつ効率的に研究を遂行していきたい。
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