研究課題/領域番号 |
23405034
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 宣弘 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80304765)
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研究分担者 |
加賀爪 優 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20101248)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 農業経済学 / 不完全競争 / 産業組織 |
研究概要 |
本研究は、卸売市場における買手寡占ならびに情報の非対称性をキーワードに、穀物市場における小売価格に対するショックが農業生産者まで伝わらない現象が起こる仕組みを理論的に解明すると共に、アジアの農産物市場を対象として不完全競争および価格不伝達の度合の測定とその要因の定量的分解を行うことを目的とするものである。 上記の目的を達成するため、研究2年目である本年度は、以下の三つの活動を重点的に行った。まず、寡占市場における情報の非対称性の効果に関する文献に関して、空間分析に着眼した詳細なレビューを行い、各手法の本研究における理論モデルへの応用可能性を検討した。中でも、発展途上国の農産物市場をより的確に表現できる可能性が指摘されているベルトラン競争、すなわち数量ではなく価格を戦略変数とする市場競争のモデル化に関して、空間的な概念を含む先行研究、空間的な概念を含まない先行研究の双方についてレビューし、それらの政策的含意を比較した。その上で、農家の投入財の購入元、生産財の販売先双方の選択肢が限られており、しかも地域外の価格情報の入手が容易でない世界を想定した、投入財・生産財の行商人の行動の理論モデルを構築した。加えて、ベトナム及びスリランカのマイクロデータを収集し、次年度以降に予定されている不完全競争度および価格不伝達度の推定ならびにそれらの規定要因の分解を行う際の基礎となる空間データベースの作成を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論研究、データ収集とも研究計画調書作成時に想定された速度で進んでおり、当初研究目的の達成が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
寡占モデルに情報の非対称性・空間性・双方向性および市場の垂直性を組み込んだ理論モデルを開発する。とりわけ、農家の投入財の購入元、生産財の販売先双方の選択肢が限られており、しかも地域外の価格情報の入手が容易でない場合を想定し、ホテリング一次元空間モデルを二次元に拡張した理論モデルを構築する。その上で、収集したミクロデータおよびおよび空間ミクロデータを用い、アジア諸国の農産物市場における価格不伝達の度合いを測定した上、それによる社会厚生の損失を抑制するための貿易政策・国内農業政策ならびに国際援助政策について考察する。
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