前年度実施した国営パーム油企業P社の事例に関する調査結果を分析し、P社がCSR事業として実施している融資の対象となった農家(PKBL農家)の施肥量は、NESシステムに参加し企業からの強い支援を得ている農家(プラズマ農家)とほぼ同じ施用量を確保しており、融資は施肥の適正化に寄与したことを明らかにした。 一方、PKBL農家のオイルパーム果房収量は、他農家に比べ低い水準に止まっていた。また、融資金は通常の農園管理経費や、農地購入に使用され、収量増に効果が高い優良品種の導入、土地改良に使用された例は無かった。融資対象農家選出の際、自社職員を優先する方針は無いが、社員は融資の公募情報へアクセスする機会が多いことから、融資対象者はP者職員を世帯員に持つ同社関係者が多かった。PKBL農家の中には、結果的に生産技術が未熟な者や、立地条件の悪い地域に農地を有している農家が含まれていたが、意図的にこうした農家を優先的に融資対象としたわけではなかった。融資事業は、企業の法的な義務を超えて、社会や環境に貢献するというCSRの意義からは、疑問の残る点もあるが、こうした問題を抱えながらも、P社が積極的にCSR活動に取り組んでいる点は、評価すべきである。 また、調査地域を訪問し、これまでの調査結果を報告して、調査対象者やその他の関係者から調査結果に対する意見を得た。さらに分析の過程で出てきた不明点を解明するため、リアウ州で補足的な現地調査を行い、独立農家のオイルパーム生産に関する情報を収集した。 3年間の調査結果をとりまとめ、平成26年2月11~12日及び3月4日に研究者、政策立案者、企業関係者等を集めたワークショップを開催し、研究成果を報告するとともに、オイルパームを中心に、責任ある農業投資を実現するための対策に関する意見交換を行った。
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