研究概要 |
ミャンマー産肝蛭を精子形成能および核リボソームITS1、ミトコンドリアNADHIのDNAマーカーにより特徴付けを行った。その結果、Yangon,Lashio,Myitkynaで感染牛より採取した88虫体は、80虫体が有精子型のFasciola gigantica、中国と国境を接する北部Myitkynaで得られた8虫体が無精子型肝蛭(単為生殖型肝蛭:aspermic Fasiola sp.)であり、ミャンマーから初めて無精子型肝蛭の存在を確認した。nadIマーカーによる系統解析により、無精子型肝蛭は同一のハプロタイプを示し、中国や日本、韓国などの東アジアで発見された無精子型肝蛭と系統学的に同一であったことから、感染動物とともに中国よりミャンマーに侵入したと考えられた。F.gigantica虫体では、17型のnadIハプロタイプが確認されたが、ネットワーク系統解析によりこれらのハプロタイプには2系統が識別され、ミャンマー産F.giganticaは2系統起源と考えられた。 タイ産肝蛭についても、同様の解析を行った。その結果、各地で感染牛より採集した147虫体では、128虫体が有精子型のF.giganticaであり、19虫体が無精子型肝蛭であり、タイ国に無精子型肝蛭が分布することが再確認された。nadIマーカーによる系統解析により、無精子型肝蛭はミャンマー産無精子型肝蛭と同様に中国や日本、韓国などの東アジアで発見された無精子型肝蛭と系統学的に同一であったことから、感染動物とともに中国よりタイに侵入したと考えられた。一方、F.giganticaでは、29型のハプロタイプを示したが、そのうち3型が優性であり、タイ産F.giganticaは3系統起源と考えられた。
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