研究課題/領域番号 |
23405044
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
板垣 匡 岩手大学, 農学部, 教授 (80203074)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肝蛭 / Fasciola gigantica / 単為生殖型肝蛭 / ネパール / ラオス / nad1 / ITS1 |
研究概要 |
24年度はネパールおよびラオス産肝蛭の系統解析を行った。 ネパールの5県でバッファロー33頭から77虫体を得た.虫体の精子型は染色標本から貯精嚢内精子の有無によって確認した。各虫体から全DNAを抽出し,ITS1型についてはPCR-RFLP法によりFh型,Fg型,Fh/Fg型を識別し、nad1型については,PCR産物の塩基配列 (535bp) をダイレクトシークエンス法により決定しハプロタイプ型として識別し,アジア各国産肝蛭のハプロタイプ型とともに系統解析を行った.その結果、9虫体は有精子型,58虫体は無精子型であることが判明した。有精子型肝蛭はITS1型がFg型であったことから,F. giganticaと同定された.無精子型肝蛭のITS1型は全虫体がFh/Fg型であった.nad1型はF. giganticaにおいて10ハプロタイプ(Fg-N1~10),単為生殖型肝蛭で2ハプロタイプ (Fsp-N1, 2) が識別された.F. giganticaのFg-N1型は9虫体でみられ,他のハプロタイプはFg-N2~9型が各々1虫体,Fg-N10型が2虫体でみられた.無精子型肝蛭のFsp-N1型は57虫体でみられ,Fsp-N2型は1虫体でみられた.Fg-N1~10型は1つのクラスターを形成し,このクラスターにはミャンマー産F. giganticaのハプロタイプも含まれた.Fsp-N1および2型は同じクラスターを形成し,Fg-N1型は中国産無精子型肝蛭 (Fg-C2型) と配列が一致した. ラオス産肝蛭55虫体についても同様の解析を行った。その結果、55虫体は有精子型、ITS1型がFg型であったことからF. giganticaと同定された。 nad1ハプロタイプでは18型が確認され、タイ、ベトナムおよび中国のF. giganticaと近縁であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度に計画していたネパール国およびラオス国の肝蛭虫体について予定以上の進捗状況で研究成果を得ることができたこと、さらにはそれらの研究成果を国際的な専門雑誌に掲載または受理されたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の研究成果から、中国で誕生後、周辺諸国にその分布を拡大していると考えられる単為生殖型肝蛭(無精子型肝蛭:aspermic Fasciola sp.)が、中国との文化的および地理的関係が極めて深いネパールから発見されたことは非常に興味深く、家畜ウシの移動を介して持ち込まれた可能性が示唆された。25年度以降においては、バングラデシュやインドなどの中国隣接国やフィリピン、インドネシアなどの島国における肝蛭の系統解析を行い、単為生殖型肝蛭のアジアにおける分布と拡散の全容解明を目指す。
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