研究課題/領域番号 |
23405046
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
豊田 剛己 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30262893)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イネクキセンチュウ / イネネモグリセンチュウ / イネネコブセンチュウ / 特異プライマー / リアルタイムPCR / メタゲノム診断 |
研究概要 |
ミャンマーは輸出金額の5割以上を農産物が占める農業大国である。主要な輸出作物はマメ類、油糧作物(ゴマなど)、コメであり、これらの安定かつ持続的な生産がミャンマー国の発展には欠かせない。ところが、これらのいずれの作物においても植物寄生性線虫の被害が生じ始めている。近年、応募者らは各種の植物寄生性線虫を土壌から直接定量する方法を確立した。これにより正確・迅速な線虫定量が可能となった。そこで、イネを中心に主要な作物の植物寄生性線虫の生息状況と作物被害の程度を見積もることが本研究の目的である。 今年度は前年度に設計したプライマーの有効性を確認するとともに、新たに分離した線虫株のシークエンス情報を基にイネクキセンチュウに対するプライマーを設計し、その有効性を確認した。イネネモグリセンチュウ、イネネコブセンチュウに対するプライマーの特異性は確認できたが、ラセンセンチュウ用プライマーは再設計が必要であった。イネクキセンチュウは特異性はあるものの、蒸留水でも立ち上がりが見られるなどその検出精度に問題があることがわかった。 ミャンマー水田28地点から採取した土壌における各種植物寄生性線虫の生息状況を見たところ、2地点でイネネコブセンチュウ、5地点でイネネモグリセンチュウが生息していた。また、ミナミネグサレセンチュウ、Pratylenchus thornei, P. zeaeは生息していないことがわかった。 上記の内、線虫生息圃場において線虫密度およびイネの収量に対する殺線虫剤の影響を評価したところ、土壌中のネコブセンチュウならびにネモグリセンチュウ密度が半減し、収量が約2割増加した。したがって、殺線虫剤処理による線虫密度の低下が2割の収量増に結びついたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に研究協力者と効果的な連携がとれずに、計画通りの圃場試験を進めることができなかった。二年目である今年度は、初年度よりは連絡を密に取ることができ、合計4回現地を訪問し圃場試験をとりまとめることができたが、依然として当初に予定した計画通りには進んでいない。先方との綿密な計画のすりあわせができていないことがやや遅れている理由である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ミャンマーの主要な植物寄生性センチュウ種を定量できるリアルタイムPCRプライマーの設計、それによる生息密度の分析、線虫による作物収量への影響を明らかにすることの3点から研究を推進する。本年度はリアルタイムPCRではうまくプライマーを設計できない線虫種があったため、最近脚光を浴びつつあるLAMP法による定量を可能とする備品を購入した。消耗品費がかなり高額なためルーチンに使うことは難しいが、リアルタイムPCRとLAMP法をうまく組み合わせて、効果的に植物寄生性センチュウ種を定量できるようにしていく。
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