ミャンマーのイネ栽培における主要な植物寄生性線虫であるイネネモグリセンチュウ(Hirschmanniella oryzae)とイネネコブセンチュウ(Meloidogyne graminicola)を定量するための検量線を作成し、Nai Pyi Taw周辺のイネ-マメ(―ゴマ)輪作地帯から採取した28圃場の線虫生息状況を調べた。イネネモグリは83%に相当する23圃場で確認され、最大値は124頭/20g土壌、検出された圃場の平均値は40.7±45.8頭/20gとなった。イネネコブは61%に相当する17圃場で検出され、最大値2480頭/20g土壌、検出された土壌の平均値408±679頭/20gとなり、いずれの線虫もミャンマー圃場の広範囲に生息していることがわかった。また、イネネコブ以外のネコブセンチュウが高密度で生息している圃場が2圃場見つかった。これらの圃場ではイネには生育障害は見られないと予想されるが、マメあるいはゴマで線虫害が見られる可能性がある。また、別の2圃場ではシストセンチュウ(Heterodera cajani)が見つかり、マメあるいはゴマに収量減をもたらしている可能性が高い。イネクキセンチュウ(Ditylenchus angustus)もイネの収量減をもたらす重要な植物寄生性線虫であるが、これまで精度の高い検出系が確立できていなかった。新たに数株をシークエンスしプライマーを設計しなおすとともに、増幅条件を検討し、特異的な検出系を確立した。この過程で、一部のイネには、イネシンガレセンチュウ(Aphelenchoides besseyi)も寄生していることを明らかにできた。ミャンマーの主要な作物であるイネ、マメ、ゴマの輪作圃場には複数種類の植物寄生性線虫がかなりの頻度ならびに密度で生息しており、ミャンマーにおけるこれら作物の必ずしも高くない収量の一因になっていると推察される。防除手段として、緑肥としてクロタラリアによる線虫密度削減効果を評価したが、本年度のポット試験では効果は確認できなかった。
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