研究課題/領域番号 |
23406004
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応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
環境系薬学
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
鳥羽 陽 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50313680)
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研究分担者 |
早川 和一 金沢大学, 薬学系, 教授 (40115267)
亀田 貴之 金沢大学, 薬学系, 助教 (50398426)
唐 寧 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (90372490)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | バイオマーカー / 大気汚染 / アジア / 有害化学物質 / 曝露評価 / 国際研修者交流(タイ) |
研究概要 |
アジア地域(中国,タイ,ロシア)において、大気(室内)環境汚染の程度と汚染の特徴の異なる地域住民を対象にした曝露調査を実施し、尿試料について3種のバイオマーカー(発生源マーカー,曝露マーカー,及び影響マーカー)を測定し、同時に大気中の粉塵や汚染物質濃度を測定する。得られたデータ群をプロファイル化して網羅的に解析し、曝露量に対する各燃焼発生源の寄与度や生体影響との関係を明確にすることで地域住民の曝露実態や地域特性を明らかにし、環境改善のための政策立案に役立てることを最終目標とする。本研究で用いる尿中バイオマーカーは、呼吸を介して曝露された大気汚染物質に由来する成分を尿中から検出し、尿中排泄レベルによって曝露量や燃焼発生源寄与度を評価するものであり、従来の大気観測とは異なるより実際の人体曝露量を反映した健康影響評価を行うことができる。平成24年度は次の研究を実施し、成果を得た。 肺がんの罹患率が高いタイ・ランパーン県の農村において、15名の喫煙者及び非喫煙者について個人サンプラーにより微小粒子状物質(PM2.5)を捕集した。各被験者の吸気中PM2.5濃度は、1立方メートルあたり平均100マイクログラムであり、喫煙者では最大で315マイクログラムを観測した。この結果より、非喫煙者であっても山火事や焼畑による木材燃焼煙に由来する高濃度のPM2.5に曝露し、喫煙者ではタイの伝統的なタバコの喫煙により、曝露量が増大することが明らかとなった。バイオマーカーについては、酸化ストレスを誘導するキノン系化合物の尿中代謝物(フェナントレンキノンのグルクロン酸抱合体)を分析した結果、家屋内での薪等を燃やすことで発生する木材燃焼煙から曝露するキノン系化合物によって、被験者の尿中代謝物濃度が増大することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
肺がん患者が多く、大気汚染の悪化が懸念されているタイ北部において大気汚染調査及び個人曝露調査を実施した。タイ・チェンマイにおいて乾季と雨季に半年間大気粉じんを捕集して分析した結果、発がん性を有する多環芳香族炭化水素類の乾季の濃度が雨季と比べて約7倍に達し、乾季に森林火災や焼畑といった木材燃焼に由来する大量の粉じんが大気汚染を悪化させていることが判明した。 また、チェンマイの農村において、室内での木材燃焼煙への高濃度曝露が予想される住民の家屋において個人サンプラーによりPM2.5を捕集し、PM2.5に含まれる発がん性/変異原性を有する多環芳香族炭化水素(PAH)を測定した結果、高濃度のPAHに住民が曝露している可能性が示唆され、木材燃焼煙のマーカーであるレボグルコサンも高く、調査した農村の住民が高濃度の木材燃焼煙に曝露し、発がん性物質の曝露量も増大していることが分かった。この結果により、24年度は肺がんの患者が特に多いタイ北部のランパーン県においても追加調査を実施し、試料の分析に取り組んでいる。 バイオマーカーについては、酸化ストレスを誘導するキノン系化合物の尿中代謝物(フェナントレンキノンのグルクロン酸抱合体)とDNAの酸化損傷のマーカーとして核酸塩基の酸化物である尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシンの質量分析による新規分析法の開発に成功した。 タイ北部の大気汚染の特性について明確になりつつあり、当初の予定を超えた成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
タイで捕集した大気粉じん(PM2.5含む)試料について、引き続きPAH、自動車排ガスに由来し変異原性の高いニトロ多環芳香族炭化水素(NPAH)、活性酸素を産生するキノン類、レボグルコサンについて分析し、大気汚染状況の解析をより詳細に実施する。バイオマーカーについても確立した分析法を用いて解析し、地域住民の生体内曝露量を明確にする。 石炭燃焼に由来する大気粉じん(PM2.5)の影響が強いと考えられる中国・北京及び瀋陽において、石炭燃焼煙と自動車排ガスに高濃度曝露している地域住民やタクシー運転手を対象に曝露調査を実施し、被験者から得た尿試料のバイオマーカー分析と個人サンプラーによる粉じんの化学分析を行い、データ解析により被験者の曝露量や燃焼発生源の寄与度について明らかにする。 タイの調査では、大気粉じん捕集用の個人サンプラーに用いたミニポンプの騒音がまれに就寝の妨げになる場合があったことから、より防音性の高い防音ボックスを自作して対応する。
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