研究課題
タイ国では、いわゆる伝承医療において、様々な天然植物由来の医薬品、健康食品の類が利用されており、まだまだ未知の医薬品シーズが眠っているものと思われる。本研究では、現地にて情報・試料(伝承医薬)の収集にあたるとともに、薬理作用(抗がん作用や抗がん剤多剤耐性克服作用)について科学的に検証することを目的としている。本年度の研究成果は、以下の通りである。1)バンレイシ科植物Ellipeiopsis cherrevensisの抽出物 (KP018)の抗がん作用の詳細について、抗がん剤排出ポンプP-glycoprotein (P-gp)を高発現しパクリタキセルに耐性を示すPR-HepG2細胞を用いて解析した。その結果、KP018はPR-HepG2細胞にネクローシスを誘発すること、さらにそのネクローシスには活性酸素が関与することが明らかとなった。2)そこでさらにショウガ科植物4種、ミカン科植物2種、バンレイシ科植物3種の抽出物についてP-gp阻害活性を調べたところ、全ての抽出物がPR-HepG2細胞におけるパクリタキセルの取り込みを上昇させ、P-gp阻害効果(抗がん剤多剤耐性克服効果)を持つことが明らかとなった。3)中でもショウガ科(Zingiberaceae)の植物であるCurcuma comosaやKaempferia marginataの抽出物に強いP-gp阻害効果が見られたことから、これら植物試料のさらなる収集を現地にて行おうとしたが、バンコクにて発生した反政府デモにより治安が悪化し、渡航が制限されたため、政情の安定を待って翌年度に収集することとした。
2: おおむね順調に進展している
既に入手していたタイ植物試料を用いた検討(抗がん作用、抗がん剤多剤耐性克服作用の解析)は、順調に進行した。しかし、研究を進める上でさらに多くの量の試料が必要となったため、現地にて収集予定であったが、これについては前述の理由で果たせなかった。
今年度に収集を果たせなかったタイ国産植物試料について、来年度に収集するとともに、タイ国研究者とこれまでの結果について討議する。収集したタイ国産植物試料について、抗がん作用、抗がん剤多剤耐性克服作用を解析し、本研究実施期間の中で得られた実験結果を総合的に勘案し、新たな抗がん剤、抗がん剤多剤耐性克服剤発見のシーズとして適した植物について考察する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (12件)
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