研究課題/領域番号 |
23406006
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
所 正治 金沢大学, 医学系, 講師 (30338024)
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研究分担者 |
吉川 尚男 奈良女子大学, 理学部, 准教授 (50191557)
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キーワード | 腸管寄生原虫 / 分子分類 / インドネシア / 人獣共通感染症 / ブラストシスチス / ジアルジア / アメーバ / トリコモナス |
研究概要 |
途上国の寄生虫まん延地域には多様な病原性腸管寄生原虫が分布している。しかし、住民の日常的な寄生虫感染状況の詳細は一部の種を除いてはほとんど明らかにされていない。本研究では分子分類を用いた種同定と遺伝子型解析によって、インドネシアの寄生虫まん延地域に分布する各種腸管寄生原虫の種内多型を網羅的に解析し、種・遺伝子型の地理的分布、宿主特異性、感染ルートを明らかにすることで、各種・型の生態学的な特徴を考慮し、まん延に対抗しうる有効な寄生虫対策を構築する。 本年度は、インドネシア、スンバ島農村部の小・中学校を拠点とした学校ベースの糞便回収と周辺地域での動物サンプル収集を、8月に約2週間のフィールドワークとして実施した。サンプル数は、ヒト便サンプル472、尿540サンプルを回収した他、同地域でヒトと密接に関係する動物からはブタ42、ネズミ23、ウシ13、ウマ14、水牛10、アヒル20、ロバ2、ヤギ6の糞便サンプルを収集した。また、ヒト糞便サンプルの顕微鏡検査では、回虫137(29.0%)、鞭虫69(14.6%)、鉤虫59(12.5%)などの蠕虫の陽性率をみた他、ジアルジア80(16,9%)、アメーバ類168(35.6%)と高率な原虫感染を検出し、またランダムに選択したヒト糞便195サンプルの培養検査では、ブラストシスチス31(15.9%)および腸トリコモナス14(7.2%)を検出した。現在、PCRおよびシークエンス解析による今年度採取サンプルの多型解析が進行中であり、詳細結果が得られ次第、家庭訪問によって得たGPS情報、インタービュー結果等との相関解析に供し、寄生虫の生態を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
詳細な遺伝子レベルでの解析は進行中だが、当初より目的としてきた網羅的な寄生原虫検出が実施可能であること、また量的にも十分な寄生虫サンプルが対象地域において実際に収集できることが確認された。また遺伝子解析についても実験室において順調に進行していることから、データの取得に問題はなく、研究初年度の達成度としてはおおむね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
リファレンスとなる各寄生原虫の各多型の収集・解析をさらに進めていくと同時に、同地域において寄生虫のまん延の原因となる基本要因の特定のために、水、食品、土壌等を含む環境要因の解析を今後実施予定である。また、寄生虫生存の基本要因が特定された場合には、寄生虫の生活環への人為的介入により、このような熱帯地域の寄生虫まん延状況を実際に軽減可能かどうかについて、無作為化比較対象試験を予定している。
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