研究課題/領域番号 |
23406009
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
濱野 真二郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70294915)
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キーワード | 南アジア / バングラデシュ / 国際研究者交流 / 感染症 / 下痢症 / 赤痢アメーバ症 / ゲノム疫学 / コホート研究 |
研究概要 |
世界の 5 歳未満児死亡数は 920 万人であり、その 20% は下痢性疾患に因る(UNICEF、2007年、世界子供白書)。赤痢アメーバ症は発展途上国における小児下痢症の主要原因であり、世界中の感染者人口はおよそ 5000 万人、同症で毎年 10 万人の命が失われている。効果的な対策を講ずるには、赤痢アメーバ原虫の感染成立のメカニズムならびに同原虫に対する感染防御機構の理解が不可欠である。我々は赤痢アメーバ症が蔓延している地域、特にバングラデシュにおいて、国際的な共同研究を展開し、感染の成立から赤痢アメーバ症の発症・重症化までを規定する宿主因子ならびに病原体の病原性因子の解明を目的としている。 調査地はバングラデシュのダッカであり、平成23年度はそこで新たに登録した新生児を対象として下痢症のコホート研究を行った。具体的には、ダッカはミルプールというスラム街において、対象新生児が居住する家庭を1日おきに訪問して新生児の健康状態をモニタした。現地の事情により、検体の回収に遅れが生じたため、当該年度の研究の一部は、平成24年度に持ち越して進められた。出生から1年の間に計385人の乳児・新生児において計1426回の下痢エピソードを記録した。下痢症患児における赤痢アメーバの検出ならびに同定(E. histolytica, E. moshkovskii もしくはE. dispar)を行ったところ、のべ1426回の下痢エピソードのうち、病原性であるE. histolytica は66例において陽性を示し、非病原性であるE. dispar はわずか5例で陽性を示すにとどまった。E. moshkovskii は42例で陽性を示し、乳児・新生児における E. moshkovskii 感染と下痢エピソードの相関が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バングラデシュ国際下痢症研究センター、ヴァージニア大学と連携して、計385人の新生児・乳児がコホート研究に参加する状態になった。また、健康状態のモニタリングも順調に進み、計1426回の下痢エピソードを記録できた。また、下痢症患児における赤痢アメーバの検出ならびに同定(E. histolytica, E. moshkovskii もしくはE. dispar)も順調に進み、病原性 E. histolytica 、非病原性 E. dispar、病原性が未知の E. moshkovskii をきちんと検出することができ、乳児・新生児における E. moshkovskii 感染と下痢エピソードの相関が示された。
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今後の研究の推進方策 |
平成 23 年度から24年度に着手した研究を着実に継続する。また免疫応答解析やゲノム疫学解析から感染防御に相関が高い因子を見出すことが出来たら、その再現性をマウスモデルで確認し、赤痢アメーバに対する感染防御機構の詳細を深く掘り下げる研究を計画する。また病原性に関連する分子を見出せたら、RNAi で遺伝子発現を抑制して病原性を検討する。赤痢アメーバの病原性に関しては、地域間・大陸間での比較も重要になるので Houpt, E. 博士(ヴァージニア大学・准教授、タンザニアでフィールド研究を展開) Sammy N. 博士(ケニア中央医学研究所、感染症寄生虫病センター長)との意見交換も定期的に行い、さらなる共同研究を展開していく予定である。
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