研究課題/領域番号 |
23406010
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
山崎 浩 国立感染症研究所, 寄生動物部, 室長 (00138207)
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研究分担者 |
倉持 利明 国立科学博物館, 動物研究部, グループ長 (80277590)
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キーワード | チリ / 裂頭条虫 / 分子疫学 / 生活史 / 感染経路 |
研究概要 |
裂頭条虫属の条虫はヒトに健康被害をもたらす重要な寄生虫であり、ヒトへの感染型となる幼虫はヒトが食用とする魚類に寄生していると考えられる。南米チリは世界有数の養殖サケ・マスの生産国であり、わが国はそのサケ・マスの主要な輸入国であることから、チリに分布する裂頭条虫による感染が懸念されている。これまでに、チリには3種の裂頭条虫(D.latvm,D.paceficum,D.dendriticum)が分布することが報告されている。しかし、幼虫、成虫とも形態のみで同定されていたことから、その結果の信頼性に問題があり、DNA解析による種の再検討の必要があった。今回の調査研究では、サンチアゴ市のチリ大学医学部寄生虫学教室のメルカド准教授の協力を得て、チリ南部のプエルトモン近郊にあるジャンキウエ湖に生息する裂頭条虫の第2中間宿主として、ヒトへの感染源と考えられるギンザケやトウゴウイワシの仲間など複数の魚類における裂頭条虫幼虫の感染実態を目的として裂頭条虫の研究材料の収集を試みた。また、調査と併行して、チリにおける裂頭条虫症の生活史や感染経路の概要を把握するために、チリ人を始め、ペット動物や野生動物に寄生する裂頭条虫の収集も行った。平成23年度には、ジャンキウエ湖のギンザケなどからは裂頭条虫の幼虫は検出されず、年ごとに寄生状況に変動があることが明らかとなった。一方、ヒトやペット、あるいは野生鳥獣から得られた裂頭条虫に関しては、現在、形態とDNA解析を実施しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度にチリ南部のジャンキウエ湖に生息するギンザケ、トウゴロウイワシの仲間など、裂頭条虫の第2中間宿主に寄生する裂頭条虫幼虫の寄生率が予想外に低く、追加的な研究材料収集はできなかった。しかし、予備調査時のサンプルを活用することに加え、ヒト、ペット動物、あるいは野生鳥獣から得られた裂頭条虫(成虫や虫卵)など追加的な材料が入手できたので、それらを含めた解析を行うことによって、チリに分布する裂頭条虫の種、分布、生活環を調査研究することができる。研究全体として、太平洋裂頭条虫の系統解析のための研究材料の入手の点に関しては遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ジャンキウエ湖に生息する魚類における裂頭条虫調査を継続するが、より効率の良い調査が行えるよう現地との調整を行う。また、裂頭条虫の種類によっては、研究材料入手が困難な場合(とくに太平洋裂頭条虫)が予想されるが、これについてはチリ大学医学部の研究協力者であるメルカド准教授を中心に医学部、臨床検査、獣医学部など関連部局との連携を強化し、研究材料の入手に努める。
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