研究課題
結核菌のすみかはヒトであり、感染者(潜在性結核)の5-10%で、潜伏菌の再増殖が生じ結核が発症する。したがい、感染者(活動性結核に加え、潜在性結核)に対処することが結核の制圧につながる。それには潜在性結核の検出技術や発症の予知法を開発する必要がある。また結核流行地では、国内と異なる栄養状況、HIV等のウイルス感染や寄生虫感染など多重感染が生じている可能性が十分にあり、それらの潜在性結核や結核発症に対するリスクは殆ど検討されていない。本研究では、増殖期の結核菌特異的抗原に加え、休眠期抗原に対する宿主応答の検出を軸に、問診、健康調査、血液生化学試験、各種病原体の感染状況を調査し、潜在性結核の検出や結核菌感染や疾患発症のリスク因子の同定を目指し、結核蔓延地区であるケニア共和国にて実施する。本年度は、代表者や分担者に加え、ケニア拠点研究所やケニア中央医学研究所の現地スタッフと連携して、ケニア国西部のMbita地区に赴き、8小学校の生徒約300名を対象として調査を実施した。問診後、体重、身長、体温等を測定、さらに検者より、血液、尿、糞便を採取した。尿や糞便に関しては、pHや出血の有無等を確認後、各種寄生虫や寄生虫卵の存在を染色後、顕微鏡下で観察した。血液に関してはマラリア原虫感染、リンパ球数の測定、抹消血単核球を分離し、各種結核菌蛋白質と混和し、37度にて炭酸ガス培養器にて培養、経時的に培養上清を採取し、結核菌抗原刺激の結果、T細胞より産生された上清中のサイトカインの産生量をELISA法により測定した。また分離した血漿の成分を生化学に分析した。現在、取得したデータを解析しているが、複数の潜在性結核や結核菌感染のリスク因子が同定されつつある。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、ケニア共和国における研究計画の倫理申請が受理され、初年度から、ケニア共和国Mbita地区の小学生を対象に計画した研究を実施することができた。
平成24年度は、Mbita地区でのデータ解析を行い、論文の作成-投稿を実現する。また、インド洋側のKwale地区に赴き、同様の研究を実施し、内陸部(Mbita地区)との感染状況の比較を行う。検体由来末梢血単核球の結核菌抗原刺激によって産生させるサイトカイン検出の感度に問題がある。現在、市販のELISAキットを使用しているが、精製サイトカインでは測定できるのに対し、培養上清中サイトカインの検出感度が低い。イミュノクロマト法やマルチプレックス法など別方法での検討を試みる。
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