研究課題
マダニ媒介性細菌感染症病原体であるヒト顆粒球アナプラズマAnaplasma phagocytophilum、およびライム病ボレリアBorrelia burgdorferiの東アジアにおける分布の実態を明らかにするため、媒介マダニ並びに保有動物である野鼠の捕獲調査を実施した。アナプラズマは16SリボソームRNA、並びに主要外被膜遺伝子p44を、ボレリアは5S-23S rRNA Intergenic spacerを標的としたPCRで検出を行った。本年度は、イルクーツク、モンゴル北部(ロシア国境付近)、済州島(韓国)、北海道稚内(日本)で、試料の野外採取調査を行った。モンゴルでは1例の疑診患者を見いだしたため、患者の推定感染場所で採取したシュルツェマダニよりアナプラズマ、ボレリアの検出を行い、それぞれ6.2%、55%が保有した。イルクーツクのシュルツェマダニからは前年に続き5%程度のアナプラズマを検出したが、野鼠、およびマダニDermacentor silvarumからは検出されなかった。また、北海道のシュルツェマダニからはボレリアを検出したが、アナプラズマは検出できなかった。前年度済州島の野鼠Apodemus agrarius 1個体から初めてアナプラズマ遺伝子を検出したため、今年度再度調査を行ったが、検出されなかった。また、日本で過去の不明熱患者試料よりアナプラズマの遺伝子を検出し、初めて日本で患者の存在を明らかとした。モンゴルではじめてアナプラズマを検出し、患者診断法の整備と感染回避へための感染防御教育の必要性を示唆した。また、 モンゴル、イルクーツクのアナプラズマp44遺伝子の系統解析の結果から、すでに報告した北海道、岩手、静岡、山梨に分布するタイプと近縁であることを明らかとし、大陸と日本の間でのアナプラズマの拡散があることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
モンゴルで1例、日本で初めて2例の疑診患者を見いだした。 モンゴルでアナプラズマの存在を明らかにしたこと、さらに極東ロシアでの結果が十分蓄積できたことで、大陸と日本の間でのアナプラズマの伝搬があったことは明らかとなった。また、中国については当初計画にあったが、ここ数年で急速にアナプラズマに関する論文が発表され、この研究課題で調査する必要性が薄れた。
中国での調査は、当初計画にはあったが、この数年間で中国研究者により膨大な研究成果が発表されており、この研究課題で中国調査を実施する意義が薄れている。このため最終年度は、韓国、台湾を中心に調査を行う。また、国内でも北海道での調査を行ない、大陸と日本の間での病原体の拡散伝播の可能性を追究する。加えて、新たな展開を目指して東南アジア(カンボジア、ベトナム、フィリピン)での調査を展開する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件)
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