研究実績の概要 |
HIV-1感染者ではヒトにより病態進行が異なる。本研究では、HIV-1感染小児において病態進行に影響するウイルス並びに宿主因子を解明することを目的とした。研究代表者らは、2000年からHIV-1感染小児102名をケニアで追跡調査している。5歳以下で抗レトロウイルス療法(ART)を開始した児29名(早期発症者)と10歳までARTを必要としなかった児32名(遅発症者)を対象に、HIV-1 gagとnef遺伝子の多様性とMHC-I関連エピトープを二群間で比較した。検出されたHIV-1亜型はA1とDであり、亜型の分布に二群間で有意差は認められなかった。Nef機能性ドメイン10個の内PxxP3領域にのみ早期発症者でより多様性が認められた(33.3% vs. 7.7%, p=0.048)。Gagアミノ酸配列の多様性に二群間で有意差は認められなかった。病態進行遅延に関連しているHLA-A*7401とA*3201が遅発症者で(39.3% vs. 11.1%, p=0.049)、病態進行促進に関連しているHLA-B*4501は早期発症者で(33.3% vs. 7.4%, p=0.045) 有意に高率に検出された。早期発症者に比べ、遅発症者ではNef蛋白質の推定HLA-B関連12-merエピトープ(3 vs. 2, p=0.037)、GagのHLA-B関連11-merエピトープ(4 vs. 1, p=0.051)とHLA-A関連9-mer エピトープ(4 vs. 1, p=0.051)の中央値は高値であったが、Nef のHLA-C関連エピトープ(4 vs. 5, p=0.046)とHLA-C関連 11-mer エピトープ(1 vs. 1.5, p=0.044)は低値であった。 これらの結果から、宿主因子であるHLAがウイルス因子に比し、病態進行により重要な役割を果たしていることが示唆された。
|