研究課題/領域番号 |
23406014
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
西園 晃 大分大学, 医学部, 教授 (70218155)
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研究分担者 |
アハメド カムルディン 大分大学, 医学部, 准教授 (00398140)
山田 健太郎 大分大学, 医学部, 助教 (70458280)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 狂犬病 / 東南アジア / 中和抗体 / ワクチン |
研究概要 |
今年度は4年間の研究期間の3年目に当たる。生きた狂犬病ウイルスを用いたウイルス中和試験法を代替し、迅速・簡便・安価に中和抗体価の定性的判定、半定量的判定を可能にした血清診断法(RAPINA法)は、国際標準試験検査法との高い一致率を示すばかりでなく、施設間での測定のばらつきが無いことも本方法が広く利用されるための絶対条件になる。本年度はRAPINA法の有用性をさらに検討するため、研究協力者であるタイ赤十字研究所のKhawplod博士の指導の元にタイ国における有用性を検討した。タイ国内3か所で収集された計65匹のイヌ血清を用いた評価で、ウイルス中和試験をゴールドスタンダードに置いた場合の陽性的中率は96.2%、陰性的中率は93.3%、一致度は94.6%であった。また日本国内の獣医師の協力の元、国内飼育犬775頭(ワクチン接種犬、未接種犬)での評価でも陽性的中率は99.0%、陰性的中率は92.8%、一致度98.2%と極めて高い相関を示し、本試験の多施設での有用性評価がほぼ確認できた。この結果の一部は既に欧文誌に公表し、さらに昨年度報告したフィリピンでのイヌ血清の中和抗体保有状況と併せて欧文誌への投稿準備中である。 昨年度の計画でベトナムにおいて、ヒトを対象に狂犬病との曝露の危険性の高い者を対象にした血清疫学調査も同時に研究協力者のベトナム国立衛生研究所のNyguen Kieu-Anh博士の元に開始された。現在まだ予備的ではあるが約200例近くのイヌ肉を扱う食肉取扱い者血清を検討したところ、狂犬病への曝露もワクチン接種も明らかでない中にウイルス抗体保有者のいることを明らかとしたことも本年度の大きな収穫である。さらに農林水産省に対して本RAPIN法の国内での臨床検査薬としての申請を行い、最終承認審査を終える段階に来ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本RAPINA法は国内外を問わず、独立した研究、検査施設でも安定的にウイルス中和抗体の保有の有無を鑑別できる方法であることが示された。狂犬病の侵淫国である多くの途上国は、人材、機材などリソースが限られた国であることが多い。本法は狂犬病の予防対策に資する優れた方法であり、現在WHOから刊行準備中である国際共通の狂犬病取扱いマニュアル集に本方法が紹介される予定であり、全世界におけるさらなる利用拡大も望める。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に則り研究を進展させる。今年度初めにはRAPINA法の国内での動物用検査試薬としての承認を済ませ、引き続き国内でのヒト用検査試薬としての申請を完了させる。さらに本法をアジアの他の国々のみならず、ヨーロッパなどの野生動物狂犬病対策の進んだ国々へも紹介し、世界規模での活用を目指す。さらに今年度明らかになったベトナムでのイヌ肉取扱者での狂犬病不顕性曝露例については、さらにその症例数を増やしてその詳細(背景、職歴、曝露歴)を検討し、効果的な個人感染防御の方策やワクチン接種へ向けた知見を集積することを目標とする。
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