• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

チェルノブイリにおける放射線誘発甲状腺がんの発症メカニズム解明にむけた疫学調査

研究課題

研究課題/領域番号 23406020
応募区分海外学術
研究機関長崎大学

研究代表者

高村 昇  長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30295068)

研究分担者 松田 尚樹  長崎大学, 先導生命科学研究支援センター, 教授 (00304973)
林田 直美  長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00420638)
中島 正洋  長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50284683)
研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2014-03-31
キーワードチェルノブイリ / 甲状腺がん / 甲状腺結節
研究概要

1986年に発生したチェルノブイリ原子力発電所の事故後、周辺3カ国(図1)において小児甲状腺がんが激増したことはよく知られている。近年WHOとIAEAが発表した報告書によると、事故後発生した小児~学童の甲状腺がんは5000例あまりに上ることが明らかにされている。さらに事故後24年余りがたって甲状腺がんの好発年齢はシフトしてきており、現在では20代半ばから30代の世代でがんが多発している(Demidchik et al. Ann Surg 2006)。このことは広島・長崎の原爆被爆者が一生涯に渡ってがん発症リスクが継続しているのと同様、チェルノブイリのヒバクシャにおける甲状腺がん発症リスクが今後も継続することを示唆するものである。そのため、甲状腺がんの早期発見・治療システム構築に加えて、高リスクグループの同定による効率的な検診システムの確立を進める必要がある。本申請では、チェルノブイリにおける甲状腺結節群を対象とした症例-対照研究を行い、甲状腺がん発症リスク因子の解明を行う。さらに、対照群、甲状腺結節(甲状腺がんなし)群、甲状腺結節(甲状腺がんあり)群において、手術標本、生検標本、血液サンプル等を用いた病理学、分子疫学的手法を活用して甲状腺結節から甲状腺がん発症に至るプロセスを解明することで、放射線内被ばくによる甲状腺がん発症のメカニズム解明を目指す。具体的には、本研究期間内に我々は、i)甲状腺結節群(約200症例)、及び性・年齢をマッチングさせた対照群(約200症例)における甲状腺がん発症頻度について臨床疫学調査を行って、甲状腺結節がその後のがん発症リスクとなりうるかを調査し、現地における効率的な甲状腺がんスクリーニング手法の確立に貢献する、ものとする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

すでに我々は、超音波画像所見を用いて症例群、対照群において臨床学的評価を行い、あわせて症例群、対照群におけるセシウム137の体内放射能量の比較を行った。
えられたデータを踏まえて、症例群、対照群における甲状腺がん発症頻度を算出し、両群における頻度を検定し、甲状腺結節の既往が甲状腺がん発症リスクになるかどうかの評価を行った。その結果、結節群では結節数、径ともに有意に増加していたのに対し、対照群では結節の発生は認められなかった。細胞診での悪性は結節群の3例のみであったが、悪性の可能性が否定できない判定困難例を併せるとその割合は対照群より有意に高かった(p<0.001)。このことから、チェルノブイリ事故当時0-10歳であり、事故後の超音波診断で甲状腺結節を認めた住民では、結節の増大リスクが高いことが示された。結果は論文にまとめ、英文誌に掲載された。

今後の研究の推進方策

今後は甲状腺がん摘出標本を用いて、病理学的検討を行うほか、in situ ハイブリダイゼーション法を用いてRET遺伝子、BRAF遺伝子の過剰発現について両群における差異を検討する。さらに、①甲状腺がん群I(甲状腺結節後に甲状腺がんを発症した群)、②甲状腺がん群II(甲状腺結節の既往なし)、③非甲状腺がん群の3つのグループの血液サンプルを用いてゲノムワイド遺伝子多型(SNPS)チップ解析を行い、以上によって得られた結果を踏まえて、研究代表者及び分担者(林田)がベラルーシ共和国ゴメリにおいて国際シンポジウムを開催し、結果の総括を行うとともに、今後の検診システム、フォローアップ体制について協議を行う。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)

  • [雑誌論文] Vertical distribution and estimated doses from artificial radionuclides in soil samples around the Chernobyl Nuclear Power Plant and the Semipalatinsk Nuclear Testing Site2013

    • 著者名/発表者名
      Yasuyuki Taira
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 8 ページ: e57524

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Urinary iodine concentrations of pregnant women in Zhitomir, Ukraine.2013

    • 著者名/発表者名
      Yui Sekitani
    • 雑誌名

      Clinical Shemistry and Laboratory Medicine

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Prognosis of thyroid nodules in individuals living in the Zhitomir region of Ukraine.2012

    • 著者名/発表者名
      Naomi Hayashida
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 7 ページ: e50648

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi