研究課題/領域番号 |
23406022
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中澤 秀介 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (20180268)
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研究分担者 |
前野 芳正 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (70131191)
CULLETON Richard 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (10503782)
HUFFMAN M.A 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (10335242)
川合 覚 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (70275733)
小林 繁男 京都大学, アジアアフリカ地域研究研究科, 教授 (40353685)
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キーワード | マラリア伝播 / マラリア原虫 / 宿主 / 媒介蚊 / 森林生態 / 文化行動 / 進化多様性 / 原虫鑑別 |
研究概要 |
東南アジアではマラリアが根絶可能だと予想されたが、サルマラリア原虫Plasmodium knowlesiのヒト感染が予想以上に多いことが明らかとなり、実態を把握するとともに人獣共通感染が生じる理由を明らかにする研究が開始された。私たちは既に、世界で初めて1匹のAnopheles dirusからヒトマラリア原虫2種とP.knowlesiを検出していたので、調査を拡大し、予想通り、調査地域(森林地帯)の感染者と原虫保有媒介蚊の約25%において、P.knowlesiを検出した。この結果は、調査した森林地域に野生サルが生息し、野生サルはサルマラリア原虫のリザーバーであり、森林内で吸血活動をする媒介蚊によって森林で活動をするヒトにもサルマラリア原虫が感染することを示唆している。マラリア伝播に係わる各要因、森林環境、サルの種と分布と行動、ヒトの生活様式と森林活動、媒介蚊の分布と行動、伝播原虫種を明らかにするために、学際的な調査活動を開始した。この研究の最終目標は、進化分散して自然宿主が主にマカク属となったP.knowlesiがなぜヒトにも感染するのか、P.knowlesiのヒトーヒト感染は自然界で起こるのかという疑問を明らかにし、有効なコントロール手法を見いだすことである。平成23年度は、目標へ至る途上で、三日熱マラリア原虫とサルマラリア原虫間では交叉反応が生じること、P.knowlesi感染住民は必ずしもマラリアを発症しないこと、P.knowlesi以外のサルマラリア原虫も伝播していること、森林劣化が焼き畑だけでなく、鉱業活動などによっても起こっていること、野生サルの行動圏が住民の行動圏と重複しているなど、興味深い事実を得た。それらのいくつかは、現象をはっきりと確認するとともに、その背後に潜んでいるメカニズムの解明へと研究が発展し始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1ヒトマラリア原虫の中で、三日熱マラリア原虫は東南アジアのサルから検出されるマラリア原虫と系統学的に非常に近いため、鑑別手法を樹立する必要がある。2ベトナム国籍を有さない研究者がベトナム国内で野外調査を行うには、ベトナム人共同研究者を確保して共同で許可申請をしなくてほならないが、共同研究者の確保が難しい。3研究者が多忙などのために調査研究に時間を割くことが困難である。
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今後の研究の推進方策 |
人獣共通マラリアは、伝播、進化、環境、多様性など今日的な課題を含んでいる。研究を進めるにはマラリア伝播の現状把握が最も重要である。なかでもマラリア原虫の種の鑑別は必須の項目であり、競争の激しい課題であるから引き続き鑑別法の樹立を目指す。ヒト、サル、媒介蚊の分布、行動などの調査の体勢がほぼ整った。それぞれの領域の課題を研究する。同時に、研究対象を他の領域へ拡大する。オンライン会議、GISなどの技術を充実させ学際的な研究グループの活動の質、量を向上させる仕組みを導入する。
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