研究課題/領域番号 |
23406023
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
宮本 和子 獨協医科大学, 看護学部, 講師 (60295764)
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研究分担者 |
松田 肇 獨協医科大学, 医学部, 特任教授 (30114648)
桐木 雅史 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (50265302)
石川 由美子 獨協医科大学, 看護学部, 講師 (50363099)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / カンボジア / タイ肝吸虫 / 生活習慣 / 住民参加 |
研究概要 |
1.流行地調査の実施とその結果:2012年12月~2013年2月に3県(コンポンチャム・カンダール・ラタナキリ)の16か村、1,206名を対象に便検査を実施。しかし全ての村で虫卵検出率は1%以下であり、新たな流行地は発見されなかった。雨期に雨が少なく、米が不作だった地域では出稼ぎも多く便提出者に偏りがあった。 2.中間宿主調査:24年度は少雨の影響で地域によって干ばつがあり、中間宿主の捕獲を予定通りに行うことができなかった。しかし既存の流行地周辺で捕獲できた中間宿主の一部からタイ肝吸虫のセルカリア・メタセルカリアを確認することができた。新たにタイ国立シルパコーン大学生物学教室に研究協力機関をお願いすることができた。同学部は中間宿主貝・淡水魚の研究に実績があり、カンボジアにおけるフィールド調査に高い関心を示している。8月と12月に捕獲した中間宿主検体の分析をお願いし、2月には共同フィールド調査を実施した。また3月にはカンボジア保健省国立マラリアセンターの本調査担当スタッフ2名に対し、中間宿主検体の処理方法やセルカリア・メタセルカリアの検出、肉眼的同定方法等のトレーニングを受け入れていただいた。 3.住民会議の実施:24年度までに新たに発見された流行地6か村(内5か村は23年度予算繰り越し分にて実施した調査により発見された)において住民会議を開催した。約600名が参加した(多いでは約150人の村人が参加)。タイ肝吸虫症を知っているという村人は0人であった。淡水魚の生食により感染する病気があることを知っている村人も参加者の中にはみられなかった。生食は「おいしい」と感じており止めるのは難しい、寄生虫にかかる危険性があると家族や友人に伝えたい、痛いなどの症状がでないと感染しても危ないと思いにくい、招待や何かのお祝いで集まった席で生魚料理が出されたら断るのは難しい、などの感想が出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度、24年度ともに天候不順の影響を受け、調査時期をずらす必要が生じたり、予定通りに検便検体を集めることができなかったり、または計画通りに中間宿主検体を捕獲できなかったりという問題がみられた。そのため流行地調査は予定より若干の遅れがみられ、中間宿主による感染サイクルの確認も計画通りには進まなかった。 便検査による罹患調査は特に、24年度は住民が出稼ぎに行っている村が多かったことから、調査対象から外した村もあった。また実施した村でも通常の村の状況と異なる住民人口分布であったことから、検査結果に影響を与えていることも否定できない。 中間宿主調査については23年度調査時に生じた中間宿主検体処理のタイムラグによる検体劣化の問題は、タイ・バンコク近郊の大学の協力を得られたため24年度には改善したが、前述のように天候の影響で十分な検体が捕獲できないという問題によりやはり計画より遅れが生じている。 結果を学会や学術雑誌にて報告する予定であるが、現在修正中であり、24年度中には雑誌掲載ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.新たな流行地発見ための方策:1)これまでの調査結果を地方保健行政スタッフ会議にて報告し、タイ肝吸虫症に関する注意を喚起するとともに、各地域の淡水魚生食状況等の情報を広く集め、新たな流行地発見のための情報収集を行いたい。2)これまで発見された流行地周辺で調査が行われていない村も多く存在するので、淡水魚生食や流行地と漁場の共有や隣接がある村を優先して罹患調査を実施する。虫卵陽性便を一部抽出し、PCRによる同定を並行して行う。 2.中間宿主検査による感染サイクル成立の証明:1で発見された流行地及びこれまで発見された流行地周辺の漁場で中間宿主を捕獲し、感染サイクルの成立を証明していく。 3.会議の開催による予防対策のための情報収集と予防対策の検討:保健行政スタッフ及び流行地住民を対象とした結果報告・健康教育・討議をセットにした会議を開催する。各地域の特徴に合わせた、住民が実施可能な予防対策を検討していくために、住民の視点・実感から出てくるアイディアを収集する。可能な地域があれば住民を中心とした検討グループを設定し、継続した討議をおこない、予防モデルの検討に活用したい。 4.調査結果を複数の論文としてまとめ、カンボジアの実態を広く周知し、カンボジアのタイ肝吸虫症に対し多くの研究者の関心を喚起したい。
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