開発途上国を脅かす三大疾病(エイズ・マラリア・結核)には多くの資源が投入され一定の成果をあげているが、その他の疾病は対策が不十分なままである。特に住血吸虫症は、世界で2億人が罹患し、8億人が感染の危機にさらされ深刻な状況である。マラウイ共和国は国土全域において住血吸虫症が流行しているが、こうした流行地域においてすら詳細な調査が行われていない。本研究では同国におけるビルハルツ住血吸虫症の現状について調査し、効果的な対策法の確立をめざす。すなわち、①マラウイ共和国における調査地域全住民を対象としたビルハルツ住血吸虫症の有病率を経時的に調査する。②駆虫薬(プラジカンテル)を対象住民に継続的に投与することにより、有病率改善への効果を測定する。③申請者による予備調査で明らかになった、調査地域内での有病率の地域較差の原因を明らかにし、地域に合わせたより効果的な対策法を考案する。 平成23年度から開始した当該研究の感染源となる水域と住民との関係性や認識度調査、駆虫薬を投与した検証など総まとめを執り行った。これまでに得られた結果を集計・分析し、マラウイ保健省に提出するためのビルハルツ住血吸虫症コントロールに向けた報告書を作成した。 ビルハルツ住血吸虫症は急性期には発熱や皮疹などの症状にとどまるが、慢性感染となって長期的に経過した場合に膀胱がんや子宮頸がんなどの悪性腫瘍発生に関連するとされている。従って、いかに慢性感染を制御できるかが本疾患のコントロールの肝腎の部分となる。3年間の調査で見られた感染症の中で、最も年齢の低かった感染者は2歳の小児であった。この寄生虫感染症は長期的な感染が健康被害との関連をもたらしうるのであるため、このように生後2年のうちに感染を起こしている事実を鑑みるに、少なくとも就学時には駆虫薬を投与するなどの対策を講じていくことが重要であると考えられた。
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