研究概要 |
(1) CKD(ステージ3以上)の有病率:血清クレアチニン値を得た合計446名を腎機能保持のCKDステージ1,2(eGFR≧60:以下G1,2群と表記)、腎機能低下のCKDステージ3以上(eGFR<60:以下G3-5群と表記)の2群にわけた。G3-5群の割合は、男女合計では(G3-5群/合計:134/446) 30%と高率であった。男女別、閉経前後別の計3群では、G3-5群の割合は、閉経後女性で(G3-5群/合計:41/92)45%と最高率で、閉経前の女性(52/188) 28%, 男性(41/166)25%の順であった。 (2) CKDのリスク因子のメタボリック症候群(MS):NCEP ATPIII基準のMSの有病率は、男性(MS/非MS+MS合計:13/166)8%程度に対し、女性(393/1,535)26%、更に閉経後は39%と最高率。MS構成因子の内、低HDL血症が20歳台でも80%、全年齢層86%と最高率の因子。IDF基準(2005)で必須の腹囲周囲径は僅か12%で、欧米人との相違を認めた。 (3) CKDとMSとの関係: 1) MSの有無と腎機能との関係: 男女合計のeGFR値は(ml/min/1.73m2;以下平均値表記),MS群(n=77)vs.非MS群(n=369):72.7vs.82.6にて、MS群のeGFR値は低値を示した。男女別でも同様で,MS有病率が高い閉経後女性のeGFR値は特に低値を示した。2) 腎機能低下とMS関連因子等諸指標(BMI, 腹囲径, ヒップ径、血糖, 中性脂肪,HDL, LDL,血圧、尿酸値、Alb値との関係:女性のG3-5群はG1,2群に比べて高血糖, 高脂血症、高尿酸血症で、特に閉経前は高血糖と、閉経後は高脂血症がG3-5群では有意。男性のG3-5群は女性とは逆に低Alb値を示した。 (4)血中血管内皮増殖因子VEGF濃度と同受容体濃度の異常が、CKD群では高率であった。 以上、CKDとMS・MS構成因子の関連は密接で、性別や閉経の前後毎の特徴がみられた。CKD早期発見や公衆衛生学的介入において、重要な新規所見であると考えられた。
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