研究課題/領域番号 |
23406035
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
森 臨太郎 独立行政法人国立成育医療研究センター, 政策科学研究部, 部長 (70506097)
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研究分担者 |
米本 直裕 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, TMC情報管理解析部・生物統計解析室, 室長 (90435727)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 途上国 / モンゴル / 子どもの発達 / 尺度 / 妥当性 |
研究概要 |
(目的)途上国の子どもの健康に関する先行研究では、子どもの発達に対して貧困や栄養失調が強く影響を与えていると述べられている。また、そうした研究では、専用のキットや評価者など様々な資源を必要とする発達検査が用いられているため、子どもの発達状態を継続的に把握することが難しいという課題が残されている。モンゴルでは2005年から乳幼児の発育・発達に関する統合的な政策が進められている。その中で、Bayley-3(Bayley Scales of Infant Development‐3)のように、専用のキットを用いて、精密に検査する仕組みは導入されつつある。しかし、一次スクリーニングとして、農村部においても、より多くの子どもの発達を評価することができる簡便で妥当な検査ツールが不足している。そのため、我々はモンゴルにおいても、広く使えるような誰でもどこでも検査が実施できるような簡便な検査ツールを開発し、その有用性を検証することを目的とした。 (方法)本研究では、モンゴルの生活環境や言語を考慮した新たな発達評価ツール(MORBAS: Mongolian Rapid Baby Assessment Scale)を作成した。このMORBASの評価結果を0歳~3.5歳の子どもの発育・発達の評価ツールのゴールドスタンダードとして国際的に広く使われているBayley-3と比較し、その併存的妥当性を検討した。 (結果)MORBASの併存的妥当性 ではBayley-3との高い相関(r = 0.86-0.97)が確認された。Bayley-3を基準としMORBASの感度分析をおこなったところ、良好な感(81.8%)と適度な特異性(52.3%)が確認され、MORBASは、発達スクリーニングに有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査フィールドのモンゴルで、6月に総選挙による政権交代があり、現地のカウンターパートの配置換えがあった。 その結果、再度、カウンターパートとの打ち合わせ・合意形成が必要になり、調査の実施準備が当初の予定よりも大幅に遅れた。その過程において、現地での研究倫理審査を受けるための手続きや、審査の進め方などでも混乱があり、計画がスムーズに進まない一つの要因となった。しかし、今回、そうした手続きなどについて習熟したことにより、平成25年度の活動の際には、有効な情報・経験を得たと考えられる
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今後の研究の推進方策 |
モンゴルでは子どもの発達障害に対して、早期発見と早期介入のいずれも十分におこなわれてこなかった。我々がこれまでにモンゴル国保健省などとともに開発してきたMORBASや発達評価のスクリーニングシステムにより、早期発見については一定の目処がつき始めている。そこで、MORBASの開発にともない、以下の方針で研究を続ける予定である。 1.MORBASをモンゴルの乳幼児における新しい簡易発達評価尺度としてまとめ、モンゴルの保健省に報告する上、世界的に認めてもらうために学術論文として投稿する。 2.家庭医と家族が子どもの発達を簡便に評価できるようにするために、MORBASの発達遅滞のカットオフを分かりやすくすることを目指す。それにより、コストがほとんどかからず保護者が自記式質問票に記入し、子どもの発達状態を10~15分程度で測定できる簡便な検査方法が実用化される 3.MORBAS の開発に際し、モンゴル国保健省や国立母子医療センター同様の取り組みを試みようとしていたUNICEF、スイスの研究チームと連携をとり、(1)各村の保健センターなど地域の医療機関ではMORBAS、(2)県の中央病院ではUNICEF が開発をする発達検査ツール、(3)首都の国立母子医療センターなど高度医療機関ではBayley-3を用いる、といった、モンゴルにおける子どもの発達評価のスクリーニングシステムの構築にも関わってきた。今後、モンゴルでMORBASを導入することで、モンゴル全国的に子どもの発達遅滞スクリーニングをおこなうことが可能になり、精密検査が必要と判定された子どもに対してより詳しく調べる効率的なシステムの確立が期待できる。 4)こうしたシステム構築により、発達の遅れの早期発見・早期治療につながり、子どもの健康状態・QOLの向上に寄与することを目指す。
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