(目的)我々は、モンゴル国ボルガン県において母子健康手帳の長期的な評価をするpopulation-based な出生コホート研究をおこなってきた。本研究では、産後3年が経過した母子に対する追跡調査を実施した。途上国において、出産時の正確な記録が残った状態で、産後3年以上が経過した母児の健康状態を調査した研究は少ないため、我々は、以下の2つを主な目的として、調査を実施した。 1.モンゴル国における産後3年が経過した母親と子どもについて、母子健康手帳の利用状況を把握し、母子健康手帳配布の効果について評価をすること 2.モンゴルにおける母親と子どもの分娩・分娩直後の状態が、産後3年が経過した際の母子の健康状態に及ぼす影響について評価すること (方法)本研究では、対象者の自宅において、構造化面接と、自記式質問票、母親と子どもの身体計測、母子手帳の記載内容の転記、子どもに対する発達検査、の計5つのデータ収集を行った。調査員が対象者の自宅を訪れた際に、書面にて研究への参加の同意を得た上で、データ収集を行った。収集されたデータはダブルチェックを行い、記述分析、回帰分析をおこなった。 (結果)本研究の回収率は94.1%であり、ボルガン県の悉皆調査にほぼ近い形でデータ収集をおこなうことができた。ボルガン県に住んでいる母親において、肥満や、尿失禁、パートナーからの暴力に苦しんでいる者がいることが分かった。子どもたちに対しては、急性呼吸器感染症による入院、火傷などの重大な事故が農村部で多く出ていることが示された。本研究により得られた結果は、今後のモンゴルの公衆衛生や母子保健政策を確立するための科学的根拠となることが期待できる。
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