研究課題/領域番号 |
23500001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
周 暁 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10272022)
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キーワード | 木 / 部分k木 / グラフ分割 / 彩色 / 動的計画法 / FPTAS |
研究概要 |
本研究では応用上よく現れるグラフのクラスである木,直並列グラフ,部分k木に対して,配電融通,システム解析・設計, 論理回路設計, VLSIの配線問題を含む様々の問題に応用されるグラフ分割問題を解くアルゴリズムの設計論を構築することが研究目的である. 今年度の成果として,グラフ特に木や直並列グラフや木幅が小さいグラフに関する理論的な展開とアルゴリズムの効率化があげられる.電力網などを需要点と供給点のあるグラフでモデル化し,供給されている需要点の需要量の合計が最大になるような電力の流し方を求める最大化問題を扱っている.本研究では,この最大化問題は木に対してすらNP困難であることを示した.さらに,木,直並列グラフ,部分k木に対し,グラフの分割と巧みな動的計画法を導入して,この問題を擬多項式時間で解くアルゴリズムを与えている.研究開発したアルゴリズムの多くは現在でも世界一高速であり,世界に誇る優れた成果として高く評価され,FAW-AAIM 2012の最優秀論文賞が受賞されている. また,グラフの彩色,辺集合分割問題など重要な組合せ問題のほとんどに対し,極めて効率のよいアルゴリズムを与えている.これらグラフアルゴリズムに関する成果は13編の論文とし,一流国際学術誌や国際会議で発表されている.これらのアルゴリズムの開発で導入された手法はグラフの彩色,分割問題に限らず多くの組合せ問題に応用可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定では,電力網などを需要点と供給点のあるグラフでモデル化し,供給されている需要点の需要量の合計が最大になるような電力の流し方を求める最大化問題を解くアルゴリズムを検討し,シミュレーションによって得られるデータを分析し, 構造的グラフである部分k木に対する配電融通問題を解く効率的アルゴリズムを検討する予定であった.ほぼ予定とおり,木に対し,グラフの分割と巧みな動的計画法を導入して,この問題を擬多項式時間で解くアルゴリズムを与えることが成功した.さらに,需要と供給を満たしながら,ある電力の流し方からある指定される電力の流し方まで,供給を中断なく遷移可能かどうかの成果も得られた.これらグラフアルゴリズムに関する成果は13編の論文とし,一流国際学術誌や国際会議で発表されていった.世界に誇る優れた成果として高く評価され,FAW-AAIM 2012の最優秀論文賞が受賞されている.予定よりとっても良い結果が得られたと確信できる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では,いままで得られたアルゴリズムを平成23,24年度で購入予定のパーソナルコンピュータを用いて実験し,得られるデータを分析し,理論的に総合評価することにより,効率のよいアルゴリズムを構築する.最終的に得られた成果をまとめ,国際会議で論文発表し,国際学術論文誌に投稿する予定である. さらに,可能の限り,開発されたアルゴリズムをウェブ上で公開する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
①物品費(5万円):データの保存やバックアップに必要な最小限の設備である.: ②旅費(65万円): 毎年4 回/人程度に研究成果を国際会議や国内会議で発表したり,国内外の大学等に調査に出かけるのに必要な最小限の国内旅費と国外旅費を計上している. ③研究補助(5万円): 既存のアルゴリズムや開発したアルゴリズムのインプレメンテーションには毎年院生1人をアルバイトとして雇用するに必要な最小限の経費を計上している. ④その他(25万円):研究成果を学会や雑誌に投稿する際,必要な経費であり,また計算機ネットワークを使用する際,データ通信料も必要な経費である.
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