研究課題/領域番号 |
23500005
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中野 眞一 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30227855)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | グラフ / データ構造 / 符号 |
研究概要 |
大規模な平面構造を、計算機上に、コンパクトかつ高機能に圧縮して格納する新しいデータ構造を開発することが、本研究の目的である。グラフの、全点間の距離行列は、配列を用いると n2 log n bitのメモリを必要とするが、わずか n2 bitのメモリに格納し、それでも、指定した2点間の距離を高速に計算する手法が知られている。本研究はこのような、圧縮したまま利用できるすぐれたデータ構造を新たに開発する。理論的に高速であることはもとより、実装しやすく、かつ、現実的にも高速な新しいデータ構造を開発する。 大規模な平面グラフや平面構造をコンパクトに格納する既知のデータ構造とアルゴリズムを網羅的に調べる。国内外の研究者と討論し、最新のデータ構造とアルゴリズムの動向について調査する。既存の様々なデータ構造を調査し、これらを本研究課題に適用し、様々な改良を試みる。 これまでに開発した様々な手法を、様々な平面構造にも適用できるように拡張・一般化し、様々な平面構造をコンパクトに格納する新しいデータ構造とアルゴリズムを新たに設計する。また既存の手法の改良についても考察する。これまでに開発したデータ構造とアルゴリズムを、計算機上に簡易実装し、その実際の性能を調べる。特にすべての辺が、垂直、もしくは、水平の線分であるグラフの描画である直交描画、および、平面グラフの格子直線描画を扱うデータ構造を重点的に実装する。 また、大規模な平面構造データの処理が必要な各分野に関して、従来のデータ構造とその性能、および、必要とされる基本クエリ等を調査する。さらに、我々が開発した新しいデータ構造が、効率よくこれらの分野に適用できるかどうかを検討する。 研究成果を、研究会や国際会議にて、積極的に発表する。さらに、成果を国際学術雑誌に投稿する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、2編の論文を国際会議で発表し、3編の論文を査読付学術雑誌に発表した。 木は様々な分野で自然にあらわれるグラフのクラスである。木の自然な2つの部分クラスのコンパクトな符号を設計した。(1)各内点が高々2個の子をもつ順序なし木、および、(2)各内点が少なくとも2個の子をもつReduced Treeである。それぞれ採択率が40%ほどの国際会議で発表した。どちらも理論的な限界に非常に近い成果となっている。(1)に関する論文は、その国際会議の選ばれた論文からなる学術雑誌の特集号に招待されている。 長方形を幾つかの長方形に分割した構造を方形描画という。これはVLSIフロアプランの基礎となる重要な概念である。この方形描画に関して、簡単かつコンパクトな符号を設計することができた。この成果は査読付学術雑誌に掲載となった。符号化複合化とも理論的に線形時間しか要さず高速である。さらにアルゴリズムもスタックひとつのみのデータ構造である簡単である。 コンパクトは符号と密接な関係にある、列挙アルゴリズムについても2つの成果を得た。グラフと2点が与えられたとき、st-orientationという構造を、幾つものアルゴリズムでは前処理として構成する。このst-orientaionの高速な列挙アルゴリズムを開発した。この成果は査読付学術雑誌に掲載となった。また、木の点で子がないものを葉というが、点の個数と葉の個数を指定したとき、そのような順序木のすべてを列挙する高速なアルゴリズムを設計した。この成果は査読付学術雑誌に掲載となった。
|
今後の研究の推進方策 |
方形描画は、VLSIのモデルの基本となる重要な概念である。平成24年度は、この方形描画、および、様々な一般化された方形描画についてコンパクトな符号を設計する。特に、従来の研究は、単にデータ量の小さな符号を設計しているのに対し、本研究は、符号のままでも、すなわち圧縮したままでも、様々な情報を高速に取り出せるような、"圧縮したまま利用できる"データ構造を開発する。これにより、いわゆる元データは不要となる。大規模方形描画を扱う様々なシステムで、大規模なメモリが不要となったり、ハードディスク上にデータを展開しないので、作業スピードが高速化されたりする。 また、大規模グラフの本質的でない辺を間引いて得られるspannerについて、これの構造やspannerを求めるアルゴリズムを開発する。たとえば、カーナビにおいて、大規模詳細地図のすべての道の情報をメモリ上に格納することができない場合に、道データを大幅に間引いた地図データを使用して高速に計算した経路であっても、元の大規模地図データを使用して長時間かけて計算した経路とさほど劣らないように、巧妙に辺を間引いた地図を作製することに相当する。理論的な近似度の保障と、実際の性能の両方について、よいspannerの構造とそれを高速に求める手法を設計する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
関連図書や資料の購入のために、消耗品費が必要である。研究成果発表や資料収集や研究成果の交換のために、旅費が必要である。開発した手法のプログラミングや実験の補助のために、謝金が必要である。資料収集に使用する情報機器の購入のために、消耗品費が必要である。プログラミングや実験のために利用するPC購入のために、消耗品費が必要である。論文掲載のために、国際会議登録料や、論文別刷代が必要である。
|