研究課題/領域番号 |
23500010
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 圭介 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (20334518)
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研究分担者 |
安永 憲司 金沢大学, 電子情報学系, 助教 (50510004)
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キーワード | 暗号理論 / ゲーム理論 / ビットコミットメント / プロトコル / 安全性 / ナッシュ均衡 |
研究概要 |
暗号理論においては従来、プロトコルの参加者は基本的に、正直者か攻撃者かのどちらかであると考えられてきた。この標準的な設定ではなく、参加者がある種の合理性に従って行動すると考える、すなわち、ゲーム理論にもとづく暗号プロトコルが提案され、考察されてきている。しかしながら、この設定のもとで対象となる暗号プロトコルのほぼすべてが秘密分散だった。 本研究の目的は、秘密分散以外の、他の暗号プロトコルを対象とすることである。特に、公開鍵暗号や電子署名などの基本的な暗号プロトコルに対する考察を行う。 この目的のために、本研究では研究期間4年を以下の3つのフェーズに分けた。第1フェーズ (H23): 秘密分散に適したモデルとプロトコルの調査および設計、第2フェーズ (H24,25): 公開鍵暗号および電子署名に適したモデルとプロトコルの設計、第3フェーズ (H26): 他の基本的なプロトコルを対象としたモデルとプロトコルの設計、の3つのフェーズである。 今年度は第2フェーズを行う予定であった。しかし昨年度、前倒しで行った第3フェーズの研究に関連して新たな課題が見つかり、その課題を調査することにより、研究が予定と異なる方向で大幅に進み、紛失通信と呼ばれる重要な基本的な暗号プロトコルを対象に新たな考察を加える行うことに成功した。この成果は、Higo, Tanaka, Yasunaga: Game-Theoretic Security for Bit Commitment, The 8th International Workshop on Security (IWSEC 2013) として、国際会議に採択され発表を行った。ビットコミットメントに対して malicious モデルの敵を対象とし、既存のある種の暗号理論的な安全性と密接に関連するゲーム理論的安全性を与えることに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、昨年度の研究が予定より大幅に進展したことにより、新たな課題が見つかり、そこでの研究が大きく進展した。これは、ビットコミットメントと呼ばれる基本的な暗号プロトコルが対象であり、研究計画の第3フェーズ (H26) に相当する内容である。しかしながら、この内容は、第1, 2フェーズについてもカバーするものではないため、第1, 2フェーズについても今後、研究を行う必要があるが、今後への大きな道筋となる研究の進展があったと見なすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究実績の概要で述べたように主に、研究の第3フェーズ (H26)「他の基本的なプロトコルを対象としたモデルとプロトコルの設計」に相当する内容を扱った。しかしながら、この内容は、第1, 2フェーズについてもカバーするものではないため、最終年度となる来年度はこれまで扱えなかった第2フェーズ (H24,25)「公開鍵暗号および電子署名に適したモデルとプロトコルの設計」を中心に行う。これに加え、本件研究課題に関連して新たな課題が数多く見つかっているため、今後の課題に関する整理も行い、他のグループによる研究をリードするための指針を探りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に引き続き、今年度も執行額に残額が生じた状況は同様に、既存研究の調査が後回しになってしまっているためである。そのため情報収集のための出張と文献購入を行えなかった。 理由を踏まえ、関連研究における最新の成果をすばやく的確に把握するために、国際会議の予稿集を収集する。会議録としては、暗号理論分野および理論計算機科学分野の中心的な国際会議であるCRYPTO、EUROCRYPT、ASIACRYPT、PKC、TCC、STOC、FOCSなどの会議録を購入することを予定している。それに加え、資料収集を含む最新成果の情報収集のため、および研究討論をするため、国内・国際会議に参加する。さらに、得られた研究成果を迅速に発表するために、国内・国際会議や学術論文誌での発表を行う。そのために必要となる論文投稿費、論文添削費も必要となる。
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