研究実績の概要 |
ゲーム理論的安全性では従来の暗号理論的安全性とは異なる概念を捉えようとしている。従来の暗号理論的安全性では、プロトコルの参加者は基本的に、正直者か攻撃者かのどちらかであると考えられてきた。ゲーム理論的安全性では、このような従来の設定ではなく、参加者がある種の合理性に従って行動すると考える。すなわち、ゲーム理論にもとづく暗号プロトコルが近年提案され、考察されてきている。しかしながら、この設定のもとで対象となる暗号プロトコルのほぼすべてが秘密分散だった。 本研究の目的は、秘密分散以外の、他の暗号プロトコルを対象とすることである。特に、公開鍵暗号や電子署名などの基本的な暗号プロトコルに対する考察を行う。 この目的のために、本研究では研究期間4年を以下の3つのフェーズに分けた。第1フェーズ (H23): 秘密分散に適したモデルとプロトコルの調査および設計、第2フェーズ (H24,25): 公開鍵暗号および電子署名に適したモデルとプロトコルの設計、第3フェーズ (H26): 他の基本的なプロトコルを対象としたモデルとプロトコルの設計、の3つのフェーズである。 今年度は第3フェーズを行い、合理的な対話証明に関する研究を進めた。ここでは、報酬と呼ばれる新しい概念についての調査および研究を進めた。また、第1フェーズに関しても、Kawachi, Okamoto, Tanaka, Yasunaga: General Constructions of Rational Secret Sharing with Expected Constant-Round Reconstruction として研究をまとめ現在、国際論文誌に投稿中である。ここでは、秘密分散に対して期待値として定数ラウンドで動作するようなプロトロルの構成法について考察している。
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