研究課題
本年度の計画通り、本研究課題の主テーマである「暗号化方式及び鍵共有方式に対する情報理論的結合可能安全性の理論的解析」に関して、昨年度の研究成果の完成度を更にあげた内容を英文論文化し、国際暗号学会(IACR)のアーカイブに投稿することにより、本研究成果を世界中に広く公表した(http://eprint.iacr.org/2012/383)。また、このうち、鍵共有方式に関する成果は、平成25年7月7日~12日にトルコで開催される国際会議IEEE ISIT 2013にて発表を行う。この成果により、暗号化方式及び鍵共有方式において、従来の情報理論的安全性と情報理論的結合可能安全性は同値であることが証明され、従来の情報理論的安全性を有する暗号化方式及び鍵共有方式は他のシステムと自由に結合しても情報理論的に安全であるとの結論を導けた。また、情報理論的に安全なタイムリリース方式(鍵共有、暗号化、認証の各方式)に関して、昨年度の成果を更に発展させた英文論文を国際暗号学会のアーカイブに投稿することにより世界に公表した(http://eprint.iacr.org/2012/460)。また、この成果に関しては、国際会議ICITS2012にて論文発表を行った。今後は、この技術に対しても情報理論的結合可能安全性に関する調査研究を行いたい。以上の研究成果は、暗号理論分野における学術的重要性だけに留まらず、多様で複雑な情報システムであふれる社会において、その構成要素となる暗号基礎技術を自由に組み合わせても情報理論的安全性を実現できることを明確に示した点で、実用的観点からもその意義は大きいと考える。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」に記載したように、暗号基礎技術である暗号化方式及び鍵共有方式に対しては、情報理論的結合可能安全性と従来の情報理論的安全性の理論的関係性を明確にした英文論文を完成させ世界に公表できた。そのため、理論的成果に関しては順調に進展しているといえる。一方、数値実験による実用性の検証に関しては当初の計画よりも多少遅れている。以上より、これらを総合的に考慮して「おおむね順調に進展している」との自己評価を行った。
今後は、既に論文発表している理論的成果に対して、数値実験による実用性の検証を行う。また、この実験結果により、実用性の観点から再考察すべき内容が出てくれば理論研究にもフィードバックを行う。このように、理論研究と実験の結果を互いにフィードバックさせながら、それぞれの完成度をあげていく。
本年度、電子情報通信学会主催による3月下旬に岐阜で開催された国内会議に、当初は、2日間にわたって参加する予定であったが、プログラム内容により1日だけの参加に変更したため、旅費が18,100円減額し、次年度研究費に繰り越す形になった。次年度は本研究の最終年度であるため、研究費の大半は、これまでの理論的研究成果を国際会議や論文誌で発表するための費用(旅費、論文掲載費)、また数値実験に必要なソフトウェア購入費用に充てる計画であり、上記の繰越金もこの一部に充てる。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件)
Proc. of 2013 IEEE International Symposium on Information Theory (ISIT2013)
巻: なし ページ: 2720-2724
10.1109/ISIT.2013.6620721
暗号と情報セキュリティシンポジウム2013 (SCIS2013)論文集
巻: なし ページ: 1F2-2
Proc. of The 30th Symposium on Cryptography and Information Security (SCIS2013)
巻: なし ページ: 1F1-3
巻: なし ページ: 1F1-4
Proc. of The 6th International Conference on Information Theoretic Security (ICITS), Springer
巻: LNCS 7412 ページ: 167-186
10.1007/978-3-642-32284-6_10
コンピューターセキュリティシンポジウム 2012 (CSS2012) 論文集
巻: なし ページ: 601-608
巻: なし ページ: 595-600