研究課題/領域番号 |
23500014
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
藤戸 敏弘 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00271073)
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研究分担者 |
藤原 洋志 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80434893)
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キーワード | 近似アルゴリズム / オンライン問題 |
研究概要 |
1.最小コスト木被覆問題とは,辺コスト付き連結グラフGを入力とし,張られる頂点の集合がGの頂点被覆となるような部分木の中でコスト最小なものを計算する問題である.これまで,一様コストの場合の2倍近似アルゴリズムか,一般コストの場合の低速3倍近似アルゴリズムしか知られていなかったのに対し,本研究では,一般コストにおける高速2倍近似アルゴリズムを開発した.同アルゴリズムは,最小コスト全域木から何枚かの葉を刈り取ることで高精度近似解を計算するが,主双対法と局所比法を組合わることで,刈り取る葉の決定を可能にしている. 2.任意のSteiner tree T は,根と葉以外にターミナルを含まない極大部分木に一意に分解できるが,それらのいずれもが高さl 以下であるとき,Tをl 制限Steiner tree という.本研究では,有向グラフ上のSteiner tree (DST) 問題に対するグリーディ近似解法を新たに提案した.同解法は,任意定数lについて多項式時間であり,最小l 制限Steiner tree のO(l・log n)倍以下のコストのDST を出力することを示した.更に,同解法を用いることで,有向グラフ上のTree cover 問題がO(log n) 倍近似可能であること示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も前年度に引き続き,「数理計画法による系統的設計法の開発」および「入力情報の局所的アクセスと確率的サンプリング」というテーマに着手した.その中で,よく知られた未解決問題として,有向グラフのシュタイナー木問題の近似可能性があるが,従来からよく知られた貪欲アプローチをより柔軟に適用するように拡張した手法により,いくつかの関連問題に対し,厳密な意味で最良な近似精度を初めて達成することができた.また,主双対法と局所比法は,いずれも確立された最適化手法であるが,両者を組合わせることで初めて従来精度を上回ることが可能であることを,本研究で示すことができた.更に,主双対法による最適化手法の可能性とその理解を深化させるべく,より高度なアルゴリズムで双対解を計算するアプローチについて検討中であり,現時点では部分的であるもののその可能性を示唆する結果も得られている.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降も引き続き,工学的成果の検証を繰り返しながら24年度の理論研究を並行して進めるが,そこでの結果を踏まえながら,本年度中あまり時間を割くことができずに終わった以下のテーマに着手する. 「部分入力情報から高速計算可能な問題の構造解析」:現在,入力データ規模に依存しないサイズ(つまり,固定ビット数) の入力情報だけで,高精度解を算出できることが知られている問題は,グラフの最小全域木,最大マッチング,最大カット,施設配置などであるが,そこで用いられる具体的方法は,局所探索法や貪欲法といった近似アルゴリズム設計での常套手段を基本骨格としている.勿論,これら骨格部分に上述「入力情報の局所的アクセスと確率的サンプリング」 の部分入力情報の獲得手段をうまく組み合わせることで,初めてこれまでの通念を覆すような計算結果を得ているわけであるが,より詳細に観察すると,対象問題に対して良い近似アルゴリズムとなりうるものが,骨格アルゴリズムとして選ばれている.そこで, (i) 局所探索法や貪欲法が高精度近似解法として機能する他の最適化問題に対する同様のアプローチの有効性 (ii) 近似アルゴリズムにおける,他の汎用基本テクニックである確率的ラウンディングや主双対法の有効性 について検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度ならびに次年度中に得られる研究成果を国内外で発表するための出張旅費を計画している.また,本プロジェクトでは,工学的産物に還元するに値するような理論的成果が得られれば,そのアルゴリズムをパッケージ化されたプログラムとして実現し,アルゴリズムデータベースの形で整備した上で一般公開することを計画しており,そのために必要な機器等も随時整えていく予定である.
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