研究課題/領域番号 |
23500017
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
向谷 博明 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70305788)
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研究分担者 |
徐 ふぁ 筑波大学, ビジネス科学研究科(系), 教授 (40253025)
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キーワード | Nash equilibrium / Pareto optimality / Stochastic systems / Markov jump systems / Romania / Australia |
研究概要 |
本研究では,モデルを特徴づけるシステムパラメータの時間変化を,マルコフジャンプシステムとして表現し,確率微分方程式に基づいて新規なパレート最適性を達成する戦略並びに確率ナッシュ均衡戦略や,これらの混合戦略を求める.上記の研究目的を達成するために,機械・電気・情報ネットワークに関連する実システムを,マルコフジャンプを伴う伊藤の確率微分方程式としてシステム表現することを行った.さらに,確率パレート最適性に関わる問題,及び確率ナッシュ均衡問題を適用し,戦略組を求めるための非線形連立型リカッチ代数方程式を導出した. 最終的に,導出された複雑な非線形連立リカッチ代数方程式を解くための数値計算アルゴリズムの開発を行った.特に,大規模計算及び計算時間の短縮を達成するために,線形行列不等式による繰り返し計算アルゴリズムの開発に成功した.当初は,並列計算機であるP.C.クラスタの利用を計画していたが,この,数値最適化アルゴリズムの開発によって,P.C.クラスタの必然性がなくなったことは,非常に大きな貢献である.これは,大規模計算機システムのダウンサイジングを意味するものであり,手頃な計算機で,マルチプルな確率戦略を得ることができるといった点で,情報工学的に意味のある結果であると考えられる.さらに,提案された数値計算では,初期値を探索することが非常に困難であったが,従来のニュートン法の適用を行った結果,初期値も問題なく得られることに成功した.最終的に,身近にある小規模クラスの計算機によって,所望の戦略組が短時間で計算できるようになったことは非常に価値のある結果であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
確率微分方程式で表現されたシステムに対して,マルコフジャンプを伴う伊藤の確率微分方程式を導入し,確率パレート最適性,及び確率ナッシュ均衡を達成する戦略組を求めるための非線形連立リカッチ型代数方程式を導出した.同時に,混合戦略を得るための条件の導出を行った.続いて,これらの確率戦略組を得るための再帰的数値計算アルゴリズムを線形行列不等式によって記述した.さらに,シミュレーションによって戦略組を得ることに成功している.本年度の特徴的な試みとして,アフィン非線形システム及びむだ時間システムへの適用も扱った.特に,アフィン非線形システムに関して,非線形偏微分方程式を導出し,線形の結果と同様に確率パレート最適性,及び確率ナッシュ均衡を達成する戦略組を求めることに成功した.また,戦略組を計算するための逐次近似アルゴリズムの検討を行った.以上の理由から,線形の確率システムだけでなく,より広範な非線形システムに関して,混合戦略をはじめ,新戦略組を得ることに成功している点で,当初の計画以上に進捗していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
線形行列不等式を基盤とする非線形連立型リカッチ代数方程式を解くための再帰的数値計算アルゴリズムの収束,並びにアフィン非線形システムに関する逐次近似アルゴリズムの収束性について検討を行う.一方,完成した大規模シミュレータによって,シミュレーションならびに数値実験によりデータを獲得し,得られた線形・非線形確率均衡・混合戦略組の妥当性の評価・検討を行う.最終的に,マルコフスイッチング等の実機特性を考慮した大規模確率モデルを対象に,得られた戦略組が均衡状態を満足することを確認することによって,有用性を示す.
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次年度の研究費の使用計画 |
非線形数値最適化に関する最新の知見を得るために,洋書をある程度購入予定である.さらに,最新の研究成果を調査・情報収集する目的と,得られた成果をいち早く発信する必要性から,国際会議に出席(論文発表を含む)するための海外出張を計画している.
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