研究実績の概要 |
n変数の関数f(x1,x2,...,xn)に対して,素子数がnの3乗の回路を設計したとする.はたして,良い回路が設計できたかどうかは,どのように評価すれば良いだろうか.たとえば,任意に小さい定数ε>0に対して,素子数がnの(3-ε)乗の如何なる回路でも関数fは計算できないといった最適性が,理論的に証明できればいいのだが,その証明は非常に難しいことが知られている.さらに,そのような具体的な関数fが実際に存在するか否かさえも分かっていない.本研究の目的は,計算に必要な時間や記憶領域などの計算資源量に基づく計算複雑性クラス間の包含関係や,クラス間の階層性を明らかにすることである.そして,クラスとクラスの間に存在する真に難しい関数を人工的に作成し,システム評価に役立てる. 二つの計算複雑性クラスA,Bを考えたとき,クラスAがBに「真に」包含されているとは,クラスAに所属しているがクラスBには所属していないという言語が存在するということである.2015年度は,多項式時間で受理できる言語のクラスPと,それを包含しているクラスNPについて,クラス間の関係を調べた.その結果,一般化FortyThievesと呼ばれる組合せ問題がNP完全であることが分かった.また,一般化Golf SolitaireがNP完全であることを,3-occurence 3-SATからの多項式時間還元で証明した.これらの結果は,クラスPとNPの真の包含関係を示唆する一つの証拠を提供している.
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