研究課題/領域番号 |
23500032
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
追川 修一 筑波大学, システム情報系, 准教授 (00271271)
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キーワード | オペレーティングシステム / 並列処理 |
研究概要 |
平成24年度は、特定の言語を前提とせずにOSカーネルの記述を可能にする基盤実行環境、Java言語で記述されユーザプロセスとして実現されたOSカーネルについて研究を行った。 特定の言語を前提とせずにOSカーネルの記述を可能にする基盤実行環境はLinux上に構築されており、この基盤実行環境上で実行されるOSカーネルは、Linuxのユーザプロセスとして実行される。従って、言語の実行環境を実機上に構築する必要はなくなり、Linux上のプログラムとしてさまざまな言語によるOSカーネルの記述が可能になる。Linuxの管理下におかれるプロセッサ別に、OSカーネルが制御するプロセッサは確保される。確保されたプロセッサの制御は、プロセッサ上で実行される制御プログラムを通して間接的に行われる。この制御プログラムとOSカーネルとの役割分担を見直すことで、OSカーネルとユーザプロセスの実行の並行性を高めることが出来た。 また、Java言語で記述されユーザプロセスとして実現されたOSカーネルの開発を行った。Java言語は、並行プログラミング機能が言語レベルで組み込まれたオブジェクト指向言語であり、並列実行の主体となるオブジェクトを明示的に記述可能である。また、型安全な言語であり、メモリ参照に関する安全性が提供されているため、OSカーネルの信頼性も可能である。Java OSカーネルは、制御プログラムを通して、そのユーザプロセスからの要求を受け付ける。その要求を処理するために、Java OSカーネルは、ユーザプロセスのアドレス空間にアクセスし、必要な操作を行うことが出来る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施として計画した、並行プログラミング機能が言語レベルで組み込まれた高レベルな言語によりOSカーネルを記述し、動作させることができている。言語としてはJava言語を採用しており、並行性をプログラミング言語レベルで記述可能になっている。さらに、OSカーネルと、OSカーネルから分離されたプロセッサの制御プログラムとの役割分担を見直すことで、実行の並行性を抽出することにも成功している。これらの成果について、論文誌1件、国際会議5件の発表を行った。 計画通り、並行性がプログラミング言語レベルで記述可能な言語でOSカーネルを記述し、動作させることができており、また実行の並行性の抽出も行えており、今後の研究を進めることができる。また、成果も論文誌や国際会議にて発表を行っていることから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
並列性の抽出に重点的に取り組む。特に、OSカーネルと制御プログラム間の並列性については、より多くのデバイスを有する実際的なシステムにおける並列性の実現に取り組む。柔軟なインタフェースを提供するためのデバイスが数多く使用されるようになっているため、そのようなシステムにおけるデバイス処理の並列化は実用性の観点から重要であると考えられる。また、同様に実用性の観点から重要であると考えられる課題として、実行の並列化による省電力化がある。そこで、省電力化について、プロセッサだけでなくメモリも含めた他の省電力化手法とあわせて検討する。さらに、OSカーネル内、OSカーネルと制御プログラムの関係だけでなく、命令レベルの並列性にも着目する。現在のプロセッサは、データ並列処理を行うことが出来るSIMDユニットを持つものが多く、このユニットの有効活用についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
デモのための要求スペックに適合するノートPCの出荷が遅れているため、その費用を平成25年度に繰り越すことになった。平成25年度には、デモ環境を構築するために購入する。デモ環境構築に必要となる謝金の支払いも行う。平成25年度では、実用性の観点から重要であると考えられる、多くのデバイスを有する実際的なシステムで実験を行うための機材を購入する。さらに、研究成果を発表するため、そして検討すべき課題について情報収集を行うために学会に参加する必要があり、そのための旅費および参加費として使用する。平成25年度に開催される国際会議には、既に2件の採録が決まっており、さらに1件投稿中である。平成25年度に得られた結果についても、随時論文投稿を行い、国 際会議において発表を行っていく計画である。
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