研究課題/領域番号 |
23500044
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
大囿 忠親 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90324475)
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キーワード | Webエージェント / Webインテリジェンス / インターネット高度化 / プッシュ配信 / リアルタイム協調編集 |
研究概要 |
本研究では、Web上でのプッシュ配信に基づくコンテンツ転用防止のための要素技術およびシステムを開発している。先行研究にて、効率の良いWeb上での疑似プッシュ配信技術(特許2件)を実現した。プッシュ配信技術を用いることで、人間にはコンテンツを配信するが、コンテンツを収集するプログラムにはコンテンツを配信しないようなシステムが実現を目指している。本研究により、より安全でより簡便に利用可能なWeb上でのコンテンツ転用防止システムが実現可能になる。 今年度は、前年度に試作したシステムの改良および応用に関連して、次の2つのサブテーマを実施した。特に、現在の手法の課題について検討するために応用システムの試作に焦点を当てた。 1つめのサブテーマとして、プッシュ配信の実装方式の洗練化を行った。具体的には、クラウドコンピューティング環境上での実装について検討し、リアルタイム性に関する検証を行った。また、リアルタイム性向上のための差分更新機構について検討した。1つめのサブテーマに関して、研究成果を、論文誌4編、および、国際会議4編として発表した。また、現在、関連する国際会議に1編発表予定である。2つ目のサブテーマとして、本技術の応用範囲を広げるための実証実験としてリアルタイム協調編集システムを実装した。具体的には、既存Webページをリアルタム協調編集可能にするシステム、および、Web上でのコンテンツ編集としてPDFを対象とした添削支援システムを実装した。試作したアプリケーションにおけるリアルタイム性を評価し、良好な結果を得た。2つめのサブテーマに関して、研究成果を、論文誌3編、および、国際会議4編として発表した。また、現在、関連する国際会議に2編発表予定である。 本年度もWeb上でのプッシュ配信技術に関する知見およびソフトウェア資産の蓄積が達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画として「コンテンツの内容を考慮した差分更新技術の開発」を予定しており、そのサブテーマとして、「プッシュ配信技術の洗練化」、「評価データの蓄積」、「耐タンパ性の向上」を掲げた。「プッシュ配信技術の洗練化」については,差分更新アルゴリズムの試作に成功し、また、クラウド環境上での実装に関しての知見を蓄積し成果を挙げることができた。「評価データの蓄積」に関しては、リアルタイム性の評価のための2つの応用例として既存Webページのリアルタイム編集システム、および、Webブラウザ上でのPDF資料添削支援システムを実装し、評価したところ、十分な性能が得られることがわかった。「耐タンパ性の向上」に関しては、初年度に計画した手法の実装を保留し、差分更新技術の改良を優先したが、本研究における「耐タンパ性の向上」に関しては、差分更新技術の延長として位置づけており、大きな遅れでは無いと考えている。すなわち、知見およびソフトウェア資産を順調に蓄積しつつあり、今後の研究を予定通り進めることが可能である。ソフトウェアの開発は予定通りに進んでおり、最終年度で成果として結実させることに向けた準備が整いつつあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度に作成したアプリケーションを用いた評価実験を繰り返しつつ、プッシュ配信技術の性能を高め、研究計画として定めた目標の達成を目指す。研究計画を発展的に修正し、コンテンツ転用防止のみならずリアルタイム協調編集における安全かつ高性能なプッシュ配信技術の実現に焦点を当てる。具体的には、既存Webページをリアルタイム協調編集にするための課題である、動的Webページへの対応について検討する。クライアントサイドおよびサーバサイドにおける動的なコンテンツ生成を含むWebページをリアルタイム協調編集可能にすることで、対応可能なWebページの種類が拡大され、コンテンツ転用防止の効果を高めることが期待される。ここでは、ソフトウェア資産の蓄積が重要であり、積極的に応用システムの開発を進め、必要なデータを収集する。さらに、SSLなどのセキュアな通信路に依存しない、かつ、簡便なWeb上でのリアルタイム通信の応用可能性について理解を深めるために、新たな応用領域について模索する。 得られた成果を関連の国際会議および国内会議で発表し、得られたフィードバックに基づき論文誌として投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
調達の遅れによりH24年度末に間に合わなかった物品が納品される予定である。遅れに伴い、別課題であるアプリケーションの試作を前倒しにしており、研究計画上の問題はない。
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