研究課題/領域番号 |
23500046
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土屋 達弘 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (30283740)
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キーワード | ソフトウェアテスト / 全ペアテスト / ブラックボックステスト / ホワイトボックステスト |
研究概要 |
本研究では,全ペアテストの概念を発展させることで,不具合発見に関する高い能力と効率を両立させるソフトウェアのテスト手法の実現を目指している.具体的には,1.全ペアテストのテストケース生成の自動化,および,2.全ペアテストのホワイトボックステストへの拡張,という二つのサブテーマを並行して進める.2年目の平成24年度では,特に1に関して大きな発展があった.テストケース生成の自動生成において課題とされていた禁則処理に関し,昨年度はSATソルバを用いた方法の有効性を示したが,本年度は二分決定グラフ(BDD)と呼ばれるデータ構造を用いた新たな手法を開発し,ツールに実装した.禁則とはテストケースが違反してはいけない条件のことで,テストケース生成においては,禁則に違反しないもののみを生成する必要がある.提案した手法では,禁則条件をはじめに一つの二分決定グラフとして表現する.この二分決定グラフをたどることで,以降,テストケースが禁則に違反しているかどうかを判定する.毎回状態探索を必要とするSATソルバを用いる手法と異なり,一度二分決定グラフを得れば,その後の処理は,このグラフを根から一方向に辿るだけで行うことができるため,きわめて高速に動作することが分かった.また,この手法を実装したテストケース生成ツールを作成した.このツールは禁則処理のサポートだけでなく,シーディング(既存のテストスイートにテストケースを追加すること)等の機能も有しており,実用レベルの有用性を備えている.2に関しては,昨年度に行った,全ペアテストをホワイトボックステストに対し適用するための関連研究調査と理論的な検討の結果を拡張し,C0, C1という既存のコードカバレッジを置き換えるカバレッジ基準として,制御フロー枝の全ペアの網羅が妥当である理論的根拠を得る段階に至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1の全ペアテストのテストケース生成の自動化については,禁則処理の高速処理,および,シーディング等の実用機能を搭載したテストケース生成ツールを作成し,当初研究期間である3年を通して達成を予定していた内容を実現した.一方,2の全ペアテストのホワイトボックステストへの拡張については,全ペアテストの概念に基づく新しいコードカバレッジの理論的な裏づけを得る段階まで達した.来年度は,このカバリッジを測定するプログラムの開発と,それを用いた実験を行う必要があるため,やや後者の課題については進捗が遅いといえるが,研究全体としては,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成25年度は,2の全ペアテストのホワイトボックステストへの拡張に注力する.すでに理論的な基礎は確立しているため,これを元に,全ペアテストの概念に基づくコードカバリッジを測定するプログラムを開発する.さらに,プログラムのベンチマークを用いて実験を行い,このカバリッジ測定ツールを適用してテストの進行とコードカバレッジの推移に関して分析を行う.また,1の全ペアテストのテストケース生成という課題については,国内外での成果発表を行うとともに,更なる応用・拡張について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
成果発表のため1回程度の国際会議発表を予定している.そのための費用を1回300千円として申請する.また,論文誌論文での発表も検討しているため,年度内に出版された場合,この別刷り代を支出する.また,カバリッジ測定プログラムの作成補助,デバッグのための謝金として,100千円程度を使用する予定である.
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