研究課題/領域番号 |
23500049
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
辻 洋 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50347506)
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研究分担者 |
佐賀 亮介 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10509178)
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / オフショアソフトウェア開発 / 成熟度モデル / リスク管理 / データマイニング |
研究概要 |
オフショアソフトウェア開発(海外の企業にソフトウェアの開発を外部委託すること)を支援するための知識管理技術の構築を目指して、研究を続行した。2年目として、前年度の構築したモデルに基づき、後日、社会実験を行えるようにプログラムを実装した。 実装したプログラムの主な特徴は次のとおりである。 (1)前年度開発した成長履歴(軌跡)から、成長に関する制約を検出する(例えば、ソフトウェア検査能力をレベル4にする前に仕様書変更能力をレベル5にしておかなければならない、など)。(2)成長が飛躍した場合(例えば、ある能力に関してレベル2からレベル4に急成長する、など)にも対応できるアルゴリズムを考案し、プログラムとして実装している。(3)従来、制約を検出するアルゴリズムとしてISMという構造化手法を用いていた。そのため、検出できる制約に制限があった。今回、SPM(シーケンシャルパターンマッチング)という手法を用いることにより、検出できる制約の数を閾値設定により、人為的に制御できるようにした。 進めるにあたって、ジョージア大学のティワナ准教授を5月に招へいした。また、来日中のグラーツ工科大学のアルバート教授と知識構造化技術について意見交換した。これらの交流内容を連名で論文としてとりまとめ1月にハワイで開催されたHICCSというシステム工学の著名な学会で発表を行った。また、5月に開催されたオフショアビジネス協会主催のシンポジウムに招待され基調講演を行った。 さらに3年目の実験計画を国内のオフショアソフトウェア開発の経験者の意見を聞きながら取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)年度前半において、本研究の分野で著名なジョージア大学のティワナ准教授を招へいし。前年に構築したモデル、アルゴリズムのレビューを行って、急成長を表す「飛躍」という概念を導入することができた。「飛躍」とは、ある能力がレベル1からレベル5まであるとして、例えば、レベル2からあるときレベル5にアップすることをいう。このことにより実世界をより表現しやすくなるだけでなく、どのようなときに飛躍が起こるかの知識発見のチャンスを見出すことが可能となった。 (2)従来前提としたISMとよぶ構造化アルゴリズムの欠点を見出し、SPMと呼ぶ手法を用いることの優位性を見出すことができた。これについて国内研究会でアイデアを発表したのち、来年度にオーストリアで開催される国際会議に投稿することができた。 (3)汎用的な構造で、リスク対策を図る制約発見プログラムを設計、試作、テストすることができた。このプログラムについて、企業内の社会人の成長モデルの解析、一般家庭におけるエネルギー消費のマインド成長モデルの解析、日本に留学希望するタイの大学生の語学等成長モデルの解析についても評価することができた。 (4)研究の途中成果を評価の高い二つの国際会議(12月ICIS、1月HICCS)で発表することができた。また、本テーマの一環で「多次元成長空間に対する主成分分析による成長パターン分類」と題して研究発表した指導学生が、平成24年関西連合大会奨励賞を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に開発したプログラムを用いて評価実験を行う。評価を想定して実装した履歴記録機能、フィードバックを取得するためのアンケート機能などについても活用する。開発したプログラムは汎用的な構造にしているので、当初予定していたオフショアソフトウェア開発分野に限定せず、他分野(サービス産業の成長モデル、企業内の社会人の成長モデル、一般家庭におけるエネルギー消費のマインド成長モデル、高校生・大学生の成長モデルなど)のデータを用いて評価を行う。 機能面として、発見した成長の関する制約を診断・説明するFMGというアルゴリズムを完成させ、プログラムとして実装する。特に次の制御パラメータを用いて、制約の違いを検出することを狙う。(1)利用者について:複数の会社のエンジニア、職位に関して上位者および下位者、(2)委託者の所属する会社の規模、(3)発注先地域(中国、インド、ベトナムなど)、(4)発注先の会社の規模、受注経験の多寡、日本支社の有無、(5)ブリッジSEの有無など。 さらに研究室で別途実装・評価を進めてきた対話型コンジョイント分析という手法との統合を目指す。特にグループ意思決定(合意形成)についてのアルゴリズムを考案・評価し、統合リスク管理の手法確立を目指す。データについては以前に収集したもの(約170件)を用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費(350k¥):得られた研究成果の発表(7月ラスベガスで開催されるHCIIおよび10月タイで開催されるACIS)、人件費・謝金(600K¥):実験の補助および実験結果の整理・資料作成補助、そのほか(150K¥):学会参加費、論文別刷料、印刷代など。
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