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2012 年度 実施状況報告書

大規模ソフトウェアモデリングのための近似的モデリング手法の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23500053
研究機関早稲田大学

研究代表者

岸 知二  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30422661)

キーワードソフトウェア / モデリング / モデル駆動開発 / プロダクトライン開発
研究概要

本研究は、大規模モデリングにおいては厳密な整合性を常に要求するモデリングは現実的でないという仮説に基づき、緩やかな整合性を許容する近似的モデリング手法の確立を目指すものである。
今年度は昨年度までの成果を見直し、近似的モデリングならびに近似的整合化の基本的な手法、近似的モデリングを支える近似度や整合度といった概念尺度をリファインし、それに基づいて近似的モデリングの枠組みを再整理した。
この枠組みに基づき、実際の企業での組込みソフトウェアのモデルベーステストを事例に、近似的モデリングの枠組みについて検討した。モデルベーステストでは対象の抽象であるモデルに基づいてテストケースを作成するが、どの程度の抽象モデルを作成し、どの程度のテストケースを作成・実施するかという問題を、近似的モデリングと近似的整合化の問題と捉えて、限られたリソースの中で効果的なテストを行うための近似の程度を考える方法を検討した。その結果基本的な枠組みとしての有効性は確認できたが、現実に検討を行うためは近似度や整合度という概念尺度をどのようなメトリクスで得るかという観点などに課題があることがわかり、その扱いについての検討を深めている段階である。
さらに、モデルはメタモデルに基づいて定義されるため、近似の議論はモデル間だけでなく、モデルとメタモデルの間にも発生する。メタモデルは不変のものではなく、モデル駆動開発などにおいてはビジネスや技術の変換に応じて進化するため、それに応じてモデル(さらにはモデル変換)との整合化の問題が発生する。メタモデル進化に伴いモデルやモデル変換を整合性ある形にする際の手法や課題を検討したが、メタモデルとモデルの間の整合性の問題に近似化の考えが適用可能なのかどうかについても、検討を進めている段階である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は昨年までの検討結果の再整理を行い、近似的モデリングの概念を明確にすることができた。特に近似度と整合度という概念尺度に基づいて近似的モデリングの枠組みをまとめることができ、当初漠然としていた近似的モデリングの考え方が明確になった点は研究のベースとして有用であった。
昨年よりも具体的な実事例に基づいて、企業の方との議論を含めた事例検討ができた点も大きな成果であった。どういうモデルを作りどこまでのテストケースを作成、実施するかという、モデルベーステスト運用の場で発生する日常的な課題に対して近似的モデリングや近似的整合性という考え方が当てはまり、テスト方針の判断を近似的モデリングにおける近似化の判断として扱うことができる見通しを得たことは大きな成果であった。一方、適用においては概念的尺度を実際のメトリクスなどで置き換える必要があるが、それが例えばテストにおけるカバレッジなどの概念とどのような関係にあるのか等、さらに検討を深めるべき点が明らかになってきた。
また研究開始当初は明確に意識していなかったが、メタモデルと近似化の関係についても立場を明らかにする必要があることが明らかになった。現在のモデリング技術はメタモデル階層の考えに基づくものが多く、特にモデル駆動開発などにおいてはメタモデルの進化の問題があるため、メタモデルとモデルの間の整合化の課題があることがわかってきた。こうした整合化の方法の検討などを行うなかで、この整合化も大きなコストを伴いうることがわかり、ここに近似化の概念をいれることが可能かどうか検討を進めている。
このように近似的モデリングの事例研究や研究観点の広がりを得られたことは成果であった。一方、実際のモデリング環境については、近似化の実際の支援機能についての検討がやや遅れており開発の着手は次年度に持ち越した。これらを踏まえ総合的にはおおむね順調という判断をした。

今後の研究の推進方策

今年度は現時点までの研究成果を踏まえ、具体的な近似的モデリング環境やその手法の実現を行う。これは近似的なモデリング戦略を決めるマクロな手法と、それに基づく具体的な近似的モデリングのミクロな手法から構成される予定である。
マクロな手法という観点からは、近似度と整合度に関する現実のメトリクスを設定し、それに基づく近似化方針の判断を行う手法を整理する。現時点での構想としては、過去に我々が提案したプロダクトライン開発における全体最適・個別最適のポートフォリオ判断手法の考え方を踏まえた手法を考えている。
ミクロな手法という観点からは、近似的モデリングを行うためのモデリングメカニズムの提案を行う。現時点の構想としては、提案した近似化概念を表現するために拡張パッケージを用意することを検討している。これについては支援環境として実現する予定である。

次年度の研究費の使用計画

研究に関する資料収集ならびに研究成果の発表のために、国内・海外での関連学会への参加を予定している。
またモデリング環境を整備するためのソフトウェア開発のための人件費としての利用を予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] 近似的モデリング技法についての考察2012

    • 著者名/発表者名
      岸知二
    • 雑誌名

      情報処理学会 ソフトウェア工学研究会報告

      巻: 2012-SE-177 3 ページ: 1-7

  • [雑誌論文] メタモデル進化を考慮したモデル変換開発手法の提案2012

    • 著者名/発表者名
      権藤晃徳, 岸知二
    • 雑誌名

      情報処理学会 ソフトウェア工学研究会報告

      巻: 2012-SE^178 28 ページ: 1-8

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公開日: 2014-07-24  

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