本研究は、大規模モデリングにおいては厳密な整合性を常に要求するモデリングは現実的でないという仮説に基づき、緩やかな整合性を許容する近似的モデリング手法の確立を目指すものである。本年度は、プロダクトライン開発における製品導出を題材に検討を進めた。 プロダクトライン開発の製品導出においては、フィーチャモデルから求めるフィーチャを含むフィーチャ群を導出し、次にアーキテクチャモデル中で、導出されたフィーチャに対応するバリアントを特定し、実際の製品を得る。しかし現実にはフィーチャモデルが大きくなりモデルの維持や導出作業が高コストになる問題がある。我々は既存研究を拡張し、製品導出を短いステップで行う手順を作成した。フィーチャモデルが具体的なバリアントを特定するだけの情報量を持っていれば、フィーチャモデルに本手順を適用すると製品が導出される。一方フィーチャモデルを近似すると導出のステップ数は減るが、バリアントがすべて特定できないため、アーキテクチャモデルに対して同様の手順をさらに適用する必要がある。つまり近似化によるフィーチャモデル側のステップ数の減少と、アーキテクチャモデル側のステップ数の増加のトレードオフを考えることで、近似化の適用を検討できると考える。 我々はトレーサビリティリンクによって起因するデッドフィーチャの過多等が近似化の導入を判断する指標になるという観測を得て、それらを推定するメトリクスを提案した。さらに製品導出やメトリクス計測を行うツールを開発した。これらにより、大規模なモデリングにおいて、複数のモデル間のマクロな構造をモデリングアーキテクチャとして捉え、メトリクスに基づいてその特性を推定し、近似的モデリングを適用するという、新たなアプローチを見出せたことが本研究の成果である。
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