近年のフラッシュメモリを用いた大容量記憶装置では集積度の高いマルチレベルセルのフラッシュメモリが用いられている.マルチレベルセルではフローティングゲートに蓄積される電荷量でトランジスタの閾値電圧が変化することを利用して1個のトランジスタで多値の情報を記憶している.この場合,トランジスタが故障するとフローティングゲートに蓄えられた電荷が変化し,閾値電圧が変化する.このようなマルチレベルセルに故障が生じたときには閾値電圧は近隣の値に誤る確率が高くなる.すなわち,多値の非対称誤りになる. 本年度はこのような隣接値にのみ誤る傾向のあるフラッシュメモリに適した符号を構成した.すなわち,多値情報における隣接値への誤りを訂正する符号を構成した.通常のシンボル誤り訂正符号ではすべての誤りに対して訂正機能を持っているのに対し,本提案の符号では誤りに制限が加えられているので効率の良い符号,すなわち同じ情報長に対してより少ない検査数で符号を構成できる.今年度は実際に符号の構成法を考案し,性能評価を行った.成果を国内の研究会や国際会議で発表した.さらに,学術論文にまとめ電子情報通信学会英文論文誌に投稿し,掲載された. また,フラッシュメモリのメモリセルには書き換え回数に制限があり,限度を超える回数の書き換えを行うとセルの誤り率が高くなり使用できなくなる.そこで,今年度はガーベージコレクションを用いた長寿命化法を提案した.本手法ではデータを頻繁に更新されるデータと更新頻度の低いデータに分別し,前者のデータは書き込み位置を頻繁に変更することにより特定のセルに書き換えが集中しないように工夫した.この成果は国内の研究会において発表した.今後は国際会議での発表や論文誌への投稿を予定している.
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