研究課題/領域番号 |
23500065
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
井上 智生 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40252829)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ソフトエラー / 高位合成 / 耐過渡故障設計 / 信頼性 / 3重系 / バインディング / スケジューリング |
研究概要 |
本研究はソフトエラーなどの外的要因による一時的な故障に対して耐性を持つディジタルシステムの高位合成法を提案することを目的とする.設計の上流から一時故障に対する耐性を考慮し,また,永久故障(継続的に生じる不良)ではなく,ソフトエラーのような一時的な故障に着目することで,オンライン(ユーザがシステムを利用しているとき)の信頼性を安価に実現することができる.研究期間は3年とした.初年度である平成23年度はデータパス部のソフトエラー耐性に主眼を置いた.誤り検出訂正機能の実現として,機能的3重系システム(3つのユニットで同計算を実行し,比較と多数決で誤りを検出,訂正)を基本とした.主な成果は次のとおりである.(1) kサイクル故障の検出可能条件および訂正可能条件:複数のユニット間で演算器を共有することでシステム全体のリソースを削減できるが,不適切な共有はユニット間の同一誤りによる誤り見逃しの可能性がある.演算器における一時故障の期間をkサイクルとしたときの検出可能な共有条件,および,訂正可能な共有条件を明らかにした.(2) kdサイクル故障検出可能/kcサイクル故障訂正可能なデータパスのためのバインディングアルゴリズム:(1) で示した条件に基づき,与えられた kc, kc (kc < = kd) に対して,kdサイクル故障検出可能/kcサイクル故障訂正可能なデータパスのための演算器バインディングのためのヒューリスティックアルゴリズムを提案した.(3) 2重系システム(検出のみ)に対するスケジューリングアルゴリズム:3重系システム(訂正可能)のスケジューリングアルゴリズムの考察の準備として,2重系システムにおける演算器数最小化を指向したスケジューリングアルゴリズムを提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スケジューリングアルゴリズムの完成度を除いて,ほぼ予定どおりの成果を得ている.特に (1), (2) については実験的にも良い評価が得られており,本研究が提案するアプローチの有効性が示せた.予定していたスケジューリングアルゴリズムは,ヒューリスティックアルゴリズムを検討したものの効果の高いものとはいえないため,完成とはいえない.よってさらなる改良や新たな着眼点に基づくヒューリスティックの考案が継続課題である.一方で,(2) については,当初のアルゴリズムを改良し高速化を実現した.この高速化の考察過程で効果的なスケジューリングアルゴリズムのヒントを得ており,完成の見込みは高いことから,この評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では,当初の計画である耐一時故障コントローラの設計法の提案を目指すとともに,前述のとおり,昨年度からの継続課題としてのスケジューリングアルゴリズムの改良,提案を目指す.上述のとおり,効果的なスケジューリングアルゴリズムの完成が近いことから,今後もほぼ計画どおりに研究を進められると思われる.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の目標達成が一部遅れたため,その成果報告等に要する経費が次年度に繰り越しとなった.その他は計画どおり執行可能の見込みである.
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