研究課題/領域番号 |
23500065
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
井上 智生 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40252829)
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キーワード | ソフトエラー / 高位合成 / 耐過渡故障設計 / 信頼性 / 3重系 / バインディング / スケジューリング / 誤り訂正・誤り検出 |
研究概要 |
本研究ではソフトエラーなどによる一時的な故障に対して耐性を持つディジタルシステムの高位合成法を提案する.平成24年度では,主にデータパス部のスケジューリングと演算器バインディングのアルゴリズムの設計を行った.具体的な成果は次のとおりである.なおここでは,過渡的な誤り継続期間を k サイクルと考えるとき,データパス部が k <= kc を満たす誤りを訂正可能なとき(k <= kd を満たす誤りを検出可能なとき),そのデータパスを kc サイクル訂正可能(kd サイクル検出可能)という. (1) 演算器数の下界の導出:3重系のスケジュール済みデータパスにおいて,kc サイクル訂正可能/kd サイクル検出可能なデータパスを合成するために必要は演算器の個数(下界)を求めた. (2) 演算器バインディングアルゴルズムの設計:上述 (1) の演算器数の下界を利用した精度の高い演算器バインディングのためのヒューリスティックアルゴリズムを開発した.提案法は,誤り訂正 (kc),検出 (kd) の条件を同時に考慮したヒューリスティック尺度を用いるため,昨年度に開発したアルゴリズム(kc に関する最適性のみを考慮するヒューリスティック)に比べて,より小さい演算器数でバインディングでき,ほとんどの場合最小の演算器数でバインディング可能である. (3) 誤り訂正条件を考慮したスケジューリングアルゴリズムの設計:上述 (1) の下界の導出方法を応用し,与えられた訂正条件 kc のもとでの演算器数最小を指向したフォースディレクテッドスケジューリングを開発した.具体的には,フォースディレクテッドスケジューリングにおける分散の計算に (1) の考えを応用した.提案法と上述 (2) のバインディングアルゴルズムを組み合わせることで,未スケジュールのデータパスに対して演算器最小のデータパス合成が可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画どおりである.本研究課題の中でもっと大きな課題と予測していた,誤り訂正条件を考慮したスケジューリングのためのヒューリスティック尺度を導出できたことは大きい.そのヒューリスティック尺度には,まだ,誤り検出条件に関する尺度を反映できていないが,研究実績の概要で述べたとおり,誤り検出条件も踏まえたバインディングアルゴルズムとそれを見積もる下界の導出に成功しているため,その完成は近いと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成 25 年度では当初の計画どおりの研究推進が可能であると思われる. 具体的な課題は次のとおりである. ・誤り検出条件 (kd) を考慮したスケジューリングアルゴリズム ・過渡故障に耐性を持つコントローラの設計法 ・ソフトエラー発生確率とエイリアス確率を考慮したより実用的な耐ソフトエラー高位合成法
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究成果発表のうち一部を平成25年度に実施することとし,研究費の一部を繰り越している.その繰り越し分を利用して成果発表を行うとともに,最終年度として計画どおりの研究を実施し,研究費を適切に執行する.
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