本研究では,一時的な故障(過渡故障)に耐性を持つディジタルシステムの高位合成法を提案する.近年の半導体技術の発展による微細化のために,複数サイクル継続するソフトエラーの発生が懸念されている.本研究ではそのようなエラーの原因をマルチサイクル過渡故障としてモデル化し,それに耐性を持つシステムの合成法の提案を目指している.最終年度の平成25年度では,主に2つの課題に取り組み,成果を得た. (1) 誤り訂正・誤り検出可能なデータパスを指向したスケジューリングアルゴリズム:前年度に提案した「誤り訂正可能なデータパスを指向したスケジューリングアルゴリズム」をもとに,k_c サイクル故障による誤りを訂正するとともに,k_d サイクル故障による誤りを検出することを可能とするデータパスの合成において,リソース(演算器数)を最小にするためのスケジューリングアルゴリズムを提案した. (2) 誤り訂正・誤り検出可能なコントローラの設計法:k_c サイクル故障訂正可能・k_d サイクル検出可能なコントローラの設計法を提案した.データパス部の耐過渡故障性(誤り訂正機構,誤り検出機構)を活用することで,コントローラ部の耐故障化のためのオーバーヘッドを最小化するものである. これらの手法は,先に提案したバインディングアルゴリズムと組み合わせることで,単純な3重化システムよりずっと小さいリソースで耐マルチサイクル過渡故障システムが実現できる.
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